私の家業は2006年に中国大陸でのすべての事業を売り払って撤収してしまいましたが、いまなお多くの日本企業が進出してしまった中国拠点の整理・売却に苦労していると聞きます。

 アジアでの新たな対立として、日中・日韓関係の悪化が改めてクローズアップされていく中で、いまなお日本と中国は貿易面でも実業面でも関わりの深い互恵的関係を築いています。ただ、民情においては、依然として中国では日本に対して問題国家の扱いをし、先日の国連総会において、中国王毅外相が日本の過去の軍国主義を批判したうえで「先の戦争では日本軍国主義の侵略により、中国だけで3500万人以上の中国人兵士や民間人が死傷した」と歴史認識の根幹を示し、日本の歴史認識問題を改めて提起してきています。この演説において中国が日本の政治姿勢を改めて批判したことは大きくニュースで取り上げられています。

 この問題がいまなお上位にくるというのは、両国にとってとても不幸なことです。というのも、中東では残忍なイスラム国という新たな問題が国際社会の頭痛の種になり、オバマ大統領が新しいテロとの戦いに軸足を移し、多くのアメリカ人がイスラム国を脅威とした上で、どちらかというと消極的であったはずの空爆を実施、さらに範囲を拡大するという騒ぎに発展しています。

 いまやアメリカは、安定していたはずのヨーロッパはクリミア半島問題でロシアに脅かされ、中東ではシリア問題他からのイスラム国の台頭による不透明感、さらにはアジアでの中国の国威高揚に伴う南シナ海の安全保障の流動化といった、三正面作戦とも言えるトリレンマに悩まされている状態です。

 そうした状況の中で、日本が外交的課題といったときにどうしても尖閣諸島を中心とした対中国の安全保障や、慰安婦問題に端を発した韓国とのレベルの低い争いにどうしても埋没しがちなのは、決して意義が無いというわけではないけれども不毛だろうと思うわけです。中国と付き合うにあたって、その中国の動きだけ見ているのではなく、世界中で発生している問題に対して日本として何を考え、中国とどのレベルで利害が対立し、あるいは協調できるのかといった俯瞰ができた上で問題の取捨選択ができない限り、日中間の関係改善は望めないでしょう。また、日中の各レベルでのパイプが細くなっているとほうぼうから指摘される問題についても、冒頭の経済の分野ですらここまで互恵的でありながら緊張関係が高まる一方です。

 そして何より、サイバー攻撃では常に日本は中国から矛を向けられた状態にあります。残念ながら事態に気づくのが遅れ、有効な対策を打てぬままにここまで「やられ放題」の状態ではあります。目を転じれば、香港では民主化を求める暴動が10万人規模にまで膨れあがり、台湾においても「香港の現状は明日の台湾ではなく、今日」との認識の元に事態を極めて深刻に注視しています。その中で、同じ民主主義国家としての日本が、果たすべき未来志向の役割は国際的に見てもたくさん存在するのではないでしょうか。過去を見ると確かに旧日本軍の悪行は非難されて然るべきであり、日本人として過去の行状について真摯に反省する姿勢は持つ必要はあるでしょうが、それを乗り越えて民主的な政治を実現したこと、国家として曲がりなりにも平和を志向する制度を構築してきたことはもっと前に出してよいのではないかと思います。もっと相対的に日中関係を見つめ直す作業を行ってこそ、世界の中の中国がより鮮明に見えてくるのではないでしょうか。