山本一郎(ブロガ―・投資家)

 東京都知事選挙が告示され、21人もの立候補者がたった一つの椅子を争う戦いが始まりました。東京都知事は日本でも最大の選挙であり、一人を選ぶのに有権者1,120万人あまりが審判を下すという大変な規模で行われるものですから、政治家として相応に優れた人物が立候補しなければならない「はず」です。

都庁(新宿区)
都庁(新宿区)
 実際には元岩手県知事、元総務大臣や日本創成会議、東京電力社外取締役などを歴任された増田寛也さん、東京10区の衆議院議員の小池百合子女史、著名ジャーナリストの鳥越俊太郎さんを軸に争うという点で、経歴だけ見るならば山口敏夫さんを含め閣僚経験者3名、有名なジャーナリストに元日弁連会長という、日本を代表する人物が立候補してきた「はず」です。過去二回、東京都知事選に出馬した元日弁連会長の宇都宮健児さんは最後の最後に降りてしまいました。いろいろ苦渋の決断もあったのではないかと思案するところではありますが…。

 しかしながら、官房長官の菅さんがこの選挙戦に関して興味深い注釈をつけています。

菅義偉官房長官「スローガンではなく具体的な政策を」

http://www.sankei.com/politics/news/160714/plt1607140023-n1.html

 また、行政学者の新潟大学の田村秀教授も、大都市東京の未来を考えるのに「軽い」論考や政策を打ち上げ花火のようにやるだけでは良くない、というお話もかなりされています。

「都政はワイドショーではない」 新潟大の田村秀教授

http://www.sankei.com/politics/news/160713/plt1607130080-n1.html

 経歴や肩書きは立派なはずなのに、出馬した候補者の顔ぶれを並べてみるだけでがっかりする感じが否めないのは、東京都をこちらの方向に向かわせる政治をするという主義主張の部分と、現実の政策としてどこに着眼し何を実現していくのかという青写真が見えないところはあるでしょう。

 政策通で実務家として担がれた増田寛也さんも、東京一極集中を強く批判してきたわけで、過去の主張や政策についての一貫性を求められるでしょうし、小池百合子女史も都知事には解散権がないのに不信任案が可決される前提で都議会解散を公約に掲げて不興を買っており、鳥越俊太郎さんにいたっては具体的な公約を問われても「無い」という状態です。これでは、東京都の都民としての利益を考えて有力候補の誰かに投票しようと思っても選択肢が無い、ということになりかねません。結局、いままでさんざん増田寛也さんを批判してきた私でさえ、いざ投票するとなると消去法で増田さんぐらいしか見当たらないのではないか、と思ってしまうぐらいの状態です。


増田寛也「ほとばしる無能」を都知事候補に担ぐ石原伸晃&自民都連(訂正とお詫びあり)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20160704-00059615/

 突き詰めれば、政治家としての主義主張を考えたとき、その政治家が有権者に対して何をもって信を問おうとしているのかという哲学や政治思想の問題が横たわっているように感じます。つまり、この人は何を実現しようと思っていて、何を価値に考えていて、そこから導き出される政策は何か、ということが分からなければ、有権者個人個人の政治信条やこの社会をどういう方向に持っていけばより良くなるのかというコンパスと六分儀がうまく働かないのではないか、と思うわけです。