森山高至(建築エコノミスト)

 建築の社会的役割や価値が問われるような問題が相次いでいます。

 普段、私たちが目にする建築といえば、まず住居、次いで職場や学校、病院、商店や駅などでしょうか。これ以外にもさまざまな施設があります。

 このうち最も身近な住居建築で起きたのが傾斜マンション問題でした。さらには空港のような巨大な施設でも地盤改良工事データが改竄(かいざん)されていました。これまで聞いたことのない事態でした。これらは皆、建設現場における下請け作業者と元請けまでの一体的な工事組織体制が崩れ始めていることを意味しています。

 そして、国民の耳目を集めたのが新国立競技場問題。斬新なデザインの巨大施設が景観に及ぼす影響が心配され、果たして建設が可能かも危ぶまれ、その予定工事金額が定まらないどころか、日に日に増え続けるという異常事態となりました。最終的には2020年の東京オリンピックにも間に合わないことが危惧された結果、国の公共施設計画が白紙見直しに至るという前代未聞の“事件”でした。

 計画がきちんと定まる前にあわてて旧国立競技場を壊してしまったのも間違いでした。世界では競技場に限らず、歴史的記念碑になるような建物は伝統を重んじ改修しながら使い続けるというのが一般的だからです。

 一方、建築本来の存在価値を問うような自然災害も発生しています。
石垣が崩落し、地震の被害が痛々しい熊本城
石垣が崩落し、地震の被害が痛々しい熊本城
 未曽有の被害をもたらした東日本大震災。今でも完全な復興にはほど遠く、福島ではいまだに原発事故の収束作業が続いています。毎年のように各地で大雨や大風、大雪、河川の氾濫や土砂崩れによる災害も起きています。築400年を誇った熊本城の石垣が倒壊した熊本地震は現在も活発な余震が続いており、まだまだ予断を許しません。