潮匡人(評論家、拓殖大学客員教授)


青森県をパトカー一台で守る?


 そもそも「島」とは何か。国際法上「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう」(国連海洋法条約第121条)。島の面積の大小は問うていない。「満潮時水面上にある」日本の島は無数に存在する。その実数を把握することは不可能に近い。

 海上保安庁(『海上保安の現況』)は北海道・本州・四国・九州を含めた日本の国土構成島数を6852と発表している(総務省統計局『日本統計年鑑』も同数字)。ここから「本土」など5島を引いた6847が日本の島の数字となる。ただし、その「周囲が0.1km以上のもの」などの基準でカウントされた数字であり、国連条約が定義した「島」の数ではない。しかも、国土交通省の資料「日本の島嶼の構成」によると(平成22年国勢調査による)日本の有人島数が418島なのに対し、無人島は6430島に及ぶ(詳しくは日本離島センター公式サイト参照)。

 つまり日本国には、最低6847以上もの島があり、その大半が無人島となっている。他方、海上保安庁の白書(「海上保安レポート」2015)によると、海上保安庁の定員は1万3208人であり(うち巡視船艇・航空機等の定員は6829人)、455隻の船艇と74機の航空機を保有している。予算額は1876億円しかない。

和歌山県の津波災害対応訓練で、海上自衛隊の大型ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」に着艦するオスプレイ=平成26年10月、和歌山県串本町沖(産経新聞社ヘリから)
和歌山県の津波災害対応訓練で、海上自衛隊の大型ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」に着艦するオスプレイ=平成26年10月、和歌山県串本町沖(産経新聞社ヘリから)
 たったこれだけの人数で、3万4000キロメートルもの海岸線を守っている。領海と排他的経済水域(EEZ)の面積で割ると、ひとりの海上保安官が、36平方キロメートルの広さを警備している計算になる。ざっくり言えば、1万平方キロメートルあたり、海保の巡視船が1隻の計算となる。1万平方キロメートルは青森県の面積に相当する。陸上の治安維持にたとえて言えば、青森県にパトカーが一台しかないという計算になる。もちろん陸と海では特性が違う、単純に比較はできない。とはいえ「せめて三倍くらいは持ちたい、巡視船艇を最低でも千隻は欲しい」、なかでも「艦載機の機動力を発揮できるヘリ搭載型の巡視船の数を増やすべき」。そう山田吉彦教授は私との共著『尖閣激突』(扶桑社)で訴えている。まず、海上保安庁の体制や能力の強化が急務の課題と言えよう。

 なかでも懸案の尖閣諸島などを所管する第十一管区海上保安本部の管轄水域は、東西で約1000キロメートル、南北は約500キロメートル、その面積は36万平方キロメートルに及ぶ。そこに位置する与那国島は、島に駐在する2人の警察官と、石垣島から交代で派遣されている1人の海上保安官によって、治安を維持してきた。国境警備としては、あまりに、お粗末な状況だった。

 前掲著で山田教授が主張するとおり、海上保安庁は「コースト・ガード(沿岸警備隊)」になるべきであろう。現在、海保の英語名称は「JCG」(ジャパン・コースト・ガード)だが、各国のコースト・ガードとは似て非なる組織だ。たとえばアメリカ合衆国のコースト・ガードは国土安全保障省の傘下にあり、軍隊に準じた組織となっている。日本の海上保安庁も、そうした名実ともの「JCG」に生まれ変わるべきときなのではないだろうか。

 離島防衛の観点からは、海上保安庁に加え、陸海空自衛隊の活動が期待される。海上保安庁と海上自衛隊などが連携して、離島に上陸される前に、海上で食い止めなければならない事態が、今後、予想される。