ユーザー目線なき流通構造


 「メーカー、流通、ゲーム雑誌の関係を見直さないと、日本の家庭用ゲーム産業は負のスパイラルから抜けられない」

 あるゲームソフト会社社長は、ゲーム業界の状況をこう憂えた。象徴的事例が、昨年12月に発売されたニンテンドーDSのゲームソフト「二ノ国 漆黒の魔導士」である。

 「二ノ国」は、スタジオジブリがアニメーション作画、久石譲氏が音楽、企画・制作を「レイトン教授」シリーズ等のヒットを飛ばすレベルファイブが担当。NHKスペシャルの「世界ゲーム革命」でも紹介され、業界団体主催の日本ゲーム大賞「フューチャー賞」を受賞。ゲーム雑誌大手の『週刊ファミ通』において、「プラチナ殿堂入り」するなど高評価を受けた。

 だが、発売初週の消化率(出荷本数に対して売れた割合)が33%と低迷。家庭用ゲームソフトは小売店の買い取りが基本なので、在庫消化のために安売りの対象となった。

 近年の家庭用ゲームの不振から、新作が手堅く売れるシリーズ物に偏重するなか、ヒット確実視の作品が躓いたことは、「市場の縮小傾向に拍車をかけた」(関係者)との指摘がある。

 「二ノ国」は業界内で評判が良かったが、過剰に小売店が仕入れた原因の1つは、「仕入れ担当者がゲーム雑誌の評価やメーカーの実績をもとに仕入れる量を決めている」(ゲームソフト会社幹部)点にある。

 ゲーム雑誌で高評価を得る要素は、単純にゲームの面白さだけではない。「ゲーム雑誌にとって、メーカーは広告のクライアント。雑誌とは別に、人気ゲームの攻略本は数十万部売れるドル箱で、出版にはメーカーの協力が必要。ビッグタイトルに低い点数はつけにくい」(関係者)事情があり、ユーザーの視点がないがしろにされやすい面がある。

 また、「メーカーも、高評価を得るため過剰に広告費を支払っている面もあり、しわ寄せが開発費にきている」(前述のゲームソフト会社社長)。

 メーカー、雑誌、小売りの都合が優先され、業界とユーザーの間に距離感が生まれている。