もっとも人材の流動性が低いからこそのメリットもある。企業内に暗黙知が蓄積されやすく、それが企業ごとの特色、すなわち「社風」となって開発に反映されるため、世界に一つしかないユニークなゲームが生まれやすい点だ。この点において「日本語」というニッチな言語を主体とする日本企業は、世界の中で大きな可能性を秘めている。この頂点に位置するのが京都に本社をおく任天堂だと考えればわかりやすいだろう。
 ここで改めて指摘しておきたいのは、日本的な雇用慣行がゲーム開発に影響を与えているとしても、そこには善し悪しがあるということだ。そのため企業には人材の流動性が低くなりやすい日本社会の現状や、技術革新が非常に早く自己研鑽が求められがちなゲーム業界の現状を念頭に置いた上での、現実的な採用計画や採用手法が求められる。それが実現できなければ、企業の将来も危うくなる。

 中でも重要なのは、暗黙知に陥りやすい企業のノウハウ、言い替えれば「社風」をできるだけ明文化していくことだ。前述したように企業が社員に求める人物像は、どこも比較的似通っている。その一方で社風は企業ごとに異なっており、社員の行動規範に対して間接的な影響を与えている。いわば社風は創造性を育む温床だといえる。逆にどれだけ優秀や人材でも、社風にそぐわずに短期間で離職する例は少なくない。

 問題は社員が社風を当たり前と捉えがちな点だ。そのためには他社からの転職組の体験談が参考になる。どのような理由で転職を決め、企業に対してどのように適合していったのか、社内でヒアリングを行うのだ。これはまた、転職者の精神的なケアにもつながる。これらはゲーム業界に固有の問題ではないが、ゲーム業界では特に必要だともいえる。ゲームは人が作るものであり、会社にとって人材は最大の資産だからだ。