和田秀樹(精神科医)


障害者に感じる理不尽


 被疑者は障害者を狙って犯行に及んだ。措置入院も受けているので施設を解雇された時から、精神障害者に対し「彼らのせいで俺はクビになったんだ」というような被害妄想的なものがあったのか、自分がクビになってみじめな暮らしをしているのに障害者は手厚い保護を受けているというふうな逆恨みをもっていたのか、よく分からない。

神奈川県警津久井署に入る植松聖容疑者を乗せた車両=7月27日午後、相模原市緑区(桐原正道撮影)
神奈川県警津久井署に入る植松聖容疑者
=7月27日、相模原市緑区(桐原正道撮影)
 日本は格差社会になり、生活保護受給者が普通に働いている人よりもいい生活をしているとか、障害者の方が健常者の失業者よりも豊かに暮らしているといった、変な逆転現象が起きていて、そういうところに非常に勝手でいびつな恨みを持つ人は多い。これはある意味、日本の特徴なんじゃないかと思う。西欧人は格差社会化すると金持ちに恨みを持つことが多く、「格差社会を何とかする」と訴えた人が選挙で票を集めたりする。日本ではいま、企業の内部留保がこれだけ増え、「パナマ文書」みたいなことが起こっているのに、意外に金持ちに怒りの矛先が向かない。生活保護問題なども含め、貧しい人へ怒りが向いてしまうのだ。
 
 池田小事件(8人が死亡、15人が負傷)では「金持ちの子が通ってるから」と宅間守元死刑囚=16年9月執行、当時(40)=が大教大附属池田小を襲ったが、秋葉原通り魔事件(7人が死亡、10人が負傷)をはじめとして、大量殺人の類いはどうも自分より弱い者、一般市民にその矛先が向けられてしまっているようだ。
 
 なぜ障害者に対し差別意識をもってしまうのか。僕がアメリカに住んでいたとき、子供が差別を受けたことがある。うちの子が手をつなごうとしても白人の子が手を振り払う。まだ3歳ぐらいのときで、「ひどいなあ」と思って見ていたら、それをかわいそうに思ったのか、今度は黒人の子がうちの子に手をつなぎにきてくれた。そのとき、うちの子が黒人の子の手を振り払った。大人の感覚から言えばもうため息が出ることなんだけど、3歳くらいの子供だから「ああ、こういうもんなんだ」って思ったことがある。障害者に対する差別意識は、そういう意味では精神障害者は別にして多くの場合目に見えるものだから、子供のころは見てて怖かったり、気持ち悪かったりといった生理的な感覚によるものも大きいと思われる。