中嶋よしふみ(シェアーズカフェ・オンライン編集長、フィナンシャルプランナー)

 先日、タレントの石田純一氏が東京都知事選に出馬宣言を行い、ほんの数日で取りやめるという騒動があった。各種メディアで多数報じられたこともあり、多くの人が目にしただろう。石田氏は野党統一候補なら出馬すると発言していたこと、そしてCMの放送中止により多額の賠償金が発生するという発言から、政府から圧力がかかっているのではないか?といった批判の声も多数あった。

 この問題については先日、「石田純一氏の出馬宣言で損害賠償請求をした企業は正しい」という記事を書いたが、記事への反響を見ると納得出来ない人がまだ多数いるようなので改めてビジネスの視点から論じてみたい。

テレビに出られないのは与党の圧力か?


「東京都知事選への出馬を断念した俳優・石田純一(62)が、水曜日のコメンテーターを務めている大阪・朝日放送(ABC)の情報番組「おはよう朝日です」(月~金、午前6・45)を、今週20日も引き続き休演することが18日、分かった。

~中略~

同局は「ニュースを取り扱う番組の性格上」と説明しており、都知事選が続く今月末までは休演が続くものとみられる。」

石田純一、今週も「おは朝」休演…たむけんが代役続行 デイリースポーツ 2016/07/18

 こういった状況から、与党の圧力じゃないかという見方が正しいようにも見える。タレントの誰々は政治的な発言をしながらテレビに出ている、なのに石田氏は出られない、これはやはり与党寄りか野党寄りの違いじゃないか、といった批判意見も見られた。

石田氏のCMが流せなくなった理由は選挙報道の公平性


 さて、これらの政府の圧力説は正しいのだろうか。政治の世界は一般人に計り知れない部分があり、実際に何が起きているかは想像の域を出ない。与党の圧力という意見も根拠があるわけでも無い。ただ、ビジネス目線で見れば何らおかしいことはない。

 先日の記事でも書いた通り、石田氏の出演するCMを放送中止せざるを得なかった理由は、テレビ局が選挙報道で公平性が強く求められているからだ。現在もニュース番組で都知事選を扱う際には、泡沫候補であっても名前や顔写真が必ず表示される。そんな状況で候補者が出演するテレビCMが流れれば特定の候補を利する放送として公平性の観点から問題になりかねない。
大勢の報道陣が詰め掛けた石田純一氏の会見=7月8日、東京都千代田区
大勢の報道陣が詰め掛けた石田純一氏の会見=7月8日、東京都千代田区
 政治的な発言をしているのに堂々とテレビに出ているとして名前が挙がっていたタレントも、選挙に出馬すれば当然CMもドラマも放送は出来ない。政治的な発言をしているタレントは多数いるが、彼ら・彼女らと石田氏の違いは単純に選挙に出ようとしていたかどうか、そこだけだ。海外のタレントは政治的な発言をしているという意見もあったが、これも国によって選挙報道に公平性のしばりが無いというだけの話だ。

 ただし、石田氏のCM中止については出馬する可能性をほのめかしただけですぐに放送中止という対応が適切な判断かどうかは議論の余地はあるだろう。前回の記事に書いた通り、現状のルールでは企業はタレントの「出馬リスク」を強く意識せざるを得ない。

※実際には情報バラエティ番組で主要三候補を全員合わせたより何倍も長く石田氏の出馬とその取りやめは長時間にわたって報じられていた(芸能コーナーの扱いではあったが)。これはとても圧力のあった候補の扱いとは言えない。