田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 激戦が予想された東京都知事選だったが、蓋を開けてみると、小池百合子氏の圧勝だった。特に序盤では(国政レベルでの)野党統一候補として話題になった鳥越俊太郎氏とはダブルスコア、「保守分裂」となった増田寛也氏にも大差をつけるものだった。小池氏は都内全域でほぼ首位を占め、特に女性層と無党派層の両方からは圧倒的支持をうけた。

 筆者は小池氏の街頭演説を二回直接見に行った。彼女の地元といえる豊島区と練馬区の両方、それぞれ選挙の序盤戦と終盤である。また多摩地区や島しょ部での演説も動画でチェックしてきた。まずそこでも年齢を問わずに女性の支持が厚かったのが目立った。これは今回の選挙の最大論点として、女性の生活のあり方(子育て、雇用、介護など)に注目が特に集まったことも反映しているだろう。この問題点について、小池氏の演説は論点を明確にし、なによりもその言葉は滑舌のいい説得力をもったものだった。
東京・秋葉原駅前で有権者らに手を振る小池百合子氏=7月17日
東京・秋葉原駅前で有権者らに手を振る小池百合子氏=7月17日
 またここが肝心なのだが、他陣営は「極右」的なイメージや、また「新自由主義的」なイメージを、小池氏に重ねて批判していた。だが彼女の公約も、また彼女自身が演説や討論会で述べた言葉も、むしろ欧米リベラル的な社会的弱者(女性、こども、介護の必要な老人たち)への目配りを全開にした政策観を内容としていた。

 この欧米リベラル的な態度は、現在の安倍政権が採用するものであり、小池氏はそれを都政の水準で選挙戦略として採用していた。筆者からみると、安倍政権の底堅い支持は、この欧米的なリベラリズム(福祉国家志向)にあり、また同時に対抗勢力の無策に助けられている成果だと思っている。小池氏はその「安倍的なるもの」をそのまま都政のレベルで実現すると訴え、さらに「草の根」的な支持を集めたのだろう。実際に、二回行った街頭演説では何十分も前から女性たちが集まっていて、耳をすましていると「誰にいれるか決めてないが、小池さんの話す内容をまずきいてみたい」という声も聞こえた。小池氏の従来の支持層とは明らかに異なる人たちが集まっていたわけである。これは驚きであった。