櫻田淳(東洋学園大学教授)

 先刻の参議院選挙の結果、自由民主党、公明党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の四党に無所属議員数名を加えた改憲志向勢力の議席数が、憲法改正国会発議に必要な参議院「三分の二」に達したことは、国民投票という政治プロセスへの対応が現実の課題となったことを示している。憲法改正プロセスは、衆参両院「三分の二」による発議の上に、国民投票による可決を要しているからである。

 もっとも、国民投票付託という政治対応は、それ自体としてはリスクの大きいものである。国民投票付託という政治対応の怖さを鮮烈に世に印象付けたのは、英国のEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票であった。この国民投票に際して、デーヴィッド・キャメロン(英国前首相)は、「ブリメイン」(英国のEU残留)という結果を期待しながらも、「ブレグジット」(英国のEU離脱)という結果を招いた。キャメロンの政治対応は、国際政治上の動揺のみならず、自らの政権運営の終焉を招くことになったのである。
EU首脳会議後、記者会見するキャメロン英首相=6月29日、ブリュッセル(ロイター=共同)
EU首脳会議後、記者会見するキャメロン英首相=6月29日、ブリュッセル(ロイター=共同)
 こうした経緯を前にして、国民投票という政治プロセスの意味を確認することは、大事である。それは、民主主義という政治体制の意義を、どのようなものとして認識するかということに関わる論点であるからである。国家統治に係る最終的な意思決定を国民の判断に委ねるという意味において、国民投票は民主主義の論理の究極形であるという評が一方にあれば、国家統治に係る結果責任を何ら負わない国民に判断を委ねる意味において、国民投票は「ポピュリズム」の跋扈と「モボクラシー」(衆愚政治)への転落を促すという評が他方にある。先刻の「ブレグジット」騒動の最中でも、たとえば、デニス・マックシェーン(元英国欧州担当閣外相)は、「庶民は頭(理屈)でなく腹(感情)で判断する」という言葉とともに、「ブレグジット」を招いた民意の非合理性を指摘した。英国のEC(欧州共同体)加盟以降、四十年に渉り、英国が欧州統合の輪の中で積み上げてきた社会・法制度上の蓄積が一夜にして崩される事態は、国民投票に反映された民意の「非合理性」を象徴的に表している。