猪野亨(弁護士)

 先日、英国全土で行われた国民投票の結果、英国はEU離脱が決定しました。その投票結果はこれです。「離脱支持 17,410,742票」、「残留支持 16,141,241票」。1,269,501票の差です。EU離脱という大きな政策転換をわずか127万票の差で決めてしまいました。極論すれば過半数で決するということであれば1票差でも良かったわけです。

 離脱票が1票でも上回れば離脱が決定するということになった場合、それは本当に民意の反映なんだろうかという疑問が沸いてきました。127万票の差でも同様です。最初からそのようなルールだということで国民投票が実施され、そのためにどちらの陣営も1票でも多くということでやってきた結果だから、それはそれで受け入れるということになるのかもしれません。
英国民投票の結果判明後、ロンドンの路上で離脱派(左)とすれ違う残留派の女性(ロイター=共同)
英国民投票の結果判明後、ロンドンの路上で離脱派(左)とすれ違う残留派の女性(ロイター=共同)
 これが普通の選挙であれば、どちらが当選するのかは1票でも多い方が勝ちというのはそうなります。特に1人を選ぶ大統領選挙のようなものであれば多い方が勝ちということに必然性があります。もっとも、これが国会議員のような一定数を選ぶということになると、特に小選挙区の場合には死票の問題もあり、単純に比較1位が当選ということに問題はないわけではありませんが。

 しかし、投票行動は、ちょっとしたことで投票率だったり、極論すれば投票当日のニュースによっても左右されかねないものです。英国では、投票前に残留派の女性国会議員が射殺されるという事件が起きました。この時は、どちらに有利に働くのかなどという観測記事も出ていましたが、少なからず影響を与えるものであることは間違いありません。

 そのときに起きた偶然なのか故意にかはわかりませんが、こういった事件が影響を与えるというのは好ましいことではありませんし、それとは全く関係なく投票行動を決めるべきなのでしょうが、現実はそうはならなかったでしょう。もし、この事件がなければ、果たして結論が同じだったかどうかは仮定の話なので全くわかりません。

 根本となる決まりごとについて、現状に変更を加えるのであれば、3分の2の賛成が必要というように承認(議決)のための要件を加重するという場合も少なからずあります。3分の2を超えるのであれば1票差であったとしても単純過半数ではありませんから、変更したいという明確な意思とみることができるからです。