河合雅司(産経新聞論説委員)


 子供の数がめっきり減った-という地域が珍しくなくなってきた。総務省がまとめた人口推計(4月1日時点)によれば、14歳以下は前年比15万人減の1605万人、総人口に占める割合は12・6%だ。人数は35年連続、割合も42年連続の減少で、ともに過去最低を更新した。

働き盛りが8割占める


 少子化はさまざまな要因が複雑に絡んで起こるが、不妊治療の進歩によって晩婚・晩産が進んだことも大きい。

 厚生労働白書によれば、2014年の平均初婚年齢は夫31・1歳(1950年は25・9歳)、妻29・4歳(同23・0歳)だ。初産の平均年齢は30・6歳(同24・4歳)と初めて30代に突入した。

 妻の結婚時の年齢別に完結出生児数(夫婦の最終的な出生数)で見ると「27~28歳」は1・94人で、これ以下の年齢はおおむね2人産んでいる。一方、「29~30歳」は1・63人、「31歳以上」は1・43人に激減する。30代の結婚では、なかなか「もう1人」とはならないようだ。

 晩婚・晩産は人生設計に少なからぬ影響を与える。“予期せぬ悩み”に直面する人は少なくない。

 例えば、夫の定年退職後に子供が大学に在学しているというケースである。早くから収入面での計画を立てておかないと、学費と老後の生活資金の両立が難しくなる。

 育児が一段落する前に年老いた親が要介護状態となり、育児と介護を同時に行わざるを得ない「ダブルケア」に直面する人も多い。

 内閣府が4月に、政府としては初の推計をまとめたが、ダブルケアは男性8・5万人、女性16・8万人の計25・3万人に上っている。年齢別では40代前半が27・1%で最も多いが、30代後半が25・8%、30代前半も16・4%で続く。8割が働き盛りの30~40代である。

世代を超えて子供にも


 さらに問題なのは、親の晩婚・晩産が世代を超えて子供に影響を及ぼし得るという点だ。50歳と40歳の両親から生まれた子供が20代後半で結婚したケースを考えれば分かるだろう。その子供は晩婚でないにもかかわらず、結婚時に両親が高齢化しているためダブルケアに直面する可能性がある。これは、夫が晩婚で妻との年齢が大きく離れた「年の差婚」でも起こり得る。

 内閣府の調査によれば、育児と介護の両方を主に担う者は男性が32・3%に対し、女性は48・5%だ。より多くの負担が女性にかかっている。仕事をしていた人のうち、業務量や労働時間を減らさざるを得なかった女性は38・7%で、その半数近くが離職に追い込まれている。

 晩婚・晩産の影響の中でも、とりわけ経済的、肉体的に厳しい環境に置かれるダブルケアの悩みは深刻だ。少子化で相談できる兄弟姉妹や親族がおらず、精神的に追い詰められる人も少なくない。

 言うまでもなく、結婚や出産に関わる選択は各人の意思だ。そこから生じる課題のすべてに、行政が対応することには限界がある。

 だが、ダブルケアは「育児と介護」という組み合わせだけではない。平均寿命の延びで両親が同時に要介護状態になり、介護する側も60代といったケースも見られる。これは晩婚とは無関係だ。

 少子高齢化がこのまま進めばダブルケアに悩む人はさらに増え、大きな社会問題となることが予想される。早急な対策が求められる。

人生プラン教育が重要


 まずは縦割り行政を排して総合的な相談窓口を設け、育児と介護の双方に対応できる専門家がケアプラン作成から支援する態勢をつくることだ。緊急時に利用できるサービスや、保育と介護とを一体的に行う施設をつくり、ダブルケアの人が優先利用できるようにすることも必要となる。

 離職を減らすためには、自宅で仕事ができるような働き方を増やす。また、夫が協力しやすい環境を整えることも急がれる。基本給が少なく残業代をあてにしなければならない人が多い現実もあることから、労働時間ではなく成果によって評価する仕組みを普及させなければならない。

 育児と介護のダブルケアの解消には、晩婚・晩産に歯止めをかける中長期的な取り組みも重要となる。若者を対象に自分の人生プランを考える機会を設け、晩婚・晩産がもたらすデメリットについても情報提供をする。

 できるところから取り組まない限り、「1億総活躍社会」など実現しない。