児玉克哉 (社会貢献推進機構理事長)



 リオオリンピックは8月5日に開幕される。すでに選手村に入っている選手や関係者も出ており、まさにカウントダウンが始まっている。しかし、このリオオリンピックには準備不足と治安の悪化で、深刻な混乱の可能性が指摘されている。

 ブラジルは、特にこの10年間で素晴らしい経済成長を遂げた。BRICsの一員として将来性が非常に高い国と位置づけられてきた。治安も徐々に良くなり、犯罪も減る傾向にあった。そうした状況の中で、ワールドカップとオリンピックの誘致に成功し、その後は世界の経済・政治において先進国の一員になると期待されていた。しかし、ここ2年くらいの間に状況が一変した。重要な貿易国であった中国の経済低迷、原油等の資源価格の下落、国内政治の混乱、汚職事件などによって、ブラジル経済はそれまでの高度経済成長からマイナス成長に変わってしまった。なんとかワールドカップは凌げたものの、オリンピックはこの景気の低迷による打撃をまともに受けることになった。

 景気の低迷による税収減や企業からの支援不足などによって、オリンピックの財源は不足する事態になった。それは建築物の粗悪化、準備の遅れ、施設や公共事業の未完成に繋がった。また、一般国民の生活も打撃を受け、良くなっていたはずの治安は元の状態に戻った。むしろ悪化したとも言われる。ジカ熱などの流行も社会不安に拍車をかけている。

 この最悪の状態でのオリンピックの開催。どのような問題や危険があるのだろうか。

1. 選手村の問題
 現在、クローズアップされているのが選手村の問題だ。資金が足らず、安上がりに作ったことと完成が遅れたことにより、すでに問題が明らかになっている。トイレの詰まり、床の破損、水漏れ、剥き出しの電気の配線など、安全にも関係するような状態である。水が汚いという苦情も出ている。健康被害にまでいくと、アスーリートの大会だけに寛容に済ますことはできない。問題が発生した事に対応ということになるのだろうが、水漏れやトイレの詰まりなどはこれからも問題化しそうだ。

日本選手団の入村式が行われ、歓迎のダンスを踊るパフォーマーとともに“自撮り”する重量挙げの八木かなえ(左)と松本潮霞=8月2日、リオデジャネイロ(川口良介撮影)
日本選手団の入村式が行われ、歓迎のダンスを踊るパフォーマーとともに“自撮り”する重量挙げの八木かなえ(左)と松本潮霞=8月2日、リオデジャネイロ(川口良介撮影)
 オーストラリア選手団は一旦は選手村は滞在に不適として宿泊を取りやめ、大きな話題になった。その後改善されたとして、戻っているようだ。現実問題として、選手村以外の宿泊施設は価格が非常に高くなっている。大人数で泊まるように今から交渉すると、とんでもない費用が新たに生じる。また宿泊施設から会場までの交通手段の確保も問題になる。治安の悪い中で、新たなリスクが生じることになる。つまり、選手村をいかに快適にするか、しか現実的には選択肢はないようだ。

 選手団によっては自費で改善・修繕をするところもあるようだ。といっても問題をすぐに修繕してくれる体制があるかどうかも不安だ。配管工や電気技師を帯同させる選手団もある。これが最も現実的かも知れない。日本の技術力で対応するというのも現実的な案となりそうだ。日本選手の部屋にはウオシュレットトイレがある、というのは今からは間に合わないかも知れない。でも実現できれば競技者のストレスは多いに解消しそうだ。

2. 治安の問題
 やはりこれは最も大きな関心事になる。会場近くには相当数の警官、軍人、警備員が置かれるので、基本的には安全だろう。問題は、会場から離れた郊外や他の都市だ。大会期間中は多くの選手やVIPがリオを訪れる。まずは彼らの警備が大切になる。これは同時に他の地域では警備が手薄になることを意味する。市内のホテルは非常に高くなっているので、少し郊外に泊まることも観光客としてはありうる選択肢だ。夜に開かれるゲームもある。公共交通機関ではホテルの前に停留所があるとは限らない。徒歩の部分があるとかなりの危険性がある。