柳澤協二(元防衛省幹部、国際地政学研究所理事長)

 

安保法制は戦争法か平和・安全法か


 昨年成立した安保法制をめぐって、政府・与党は、戦争をしないための「平和・安全法」だと言い、反対派は日本を戦争する国に変える「戦争法」と言う。これは、どちらも正しいとは言えない。

 安保法制が平和に役立つという論理には、二つの側面がある。一つは、自衛隊派遣と武器使用の枠組みを拡大することによって、国際秩序の維持に日本が貢献することになるから、というものであり、もう一つは、アメリカと一体化することによって抑止力を高め、日本に対する攻撃を防ぐことができる、ということである。

南シナ海に展開する米空母ロナルド・レーガン(米海軍提供)
南シナ海に展開する米空母ロナルド・レーガン(米海軍提供)
 一方、国際秩序維持の目的で武器を使うことは、すなわち国際秩序に従うことを相手に強制することであるから、それは、武力によって相手を強制するという意味の戦争にほかならない。また、アメリカと一体化することで抑止力を高めるという論理は、日本を攻撃すればアメリカが出てくることを相手に認識させることによって攻撃を思いとどまらせるという発想だが、同時に、アメリカが行う戦争に進んで一体化することを意味している。

 安保法制の背景にある自衛隊の海外任務拡大とアメリカと一体化する抑止力の論理は、ともに、これまで禁じてきた戦争を法律上選択できるようにすることによって国際秩序を維持し、日本を脅かすかもしれない近隣の敵にアメリカの怖さを意識させることによって平和と安全を維持しようという発想に立脚している。

 すなわち、安保法制は、戦争をもって秩序を維持し、戦争の威嚇によって戦争を防ごうとするものであって、その動機に着目すれば平和のための法制かも知れないが、その手段に着目すれば、戦争法以外の何物でもない。そして、戦争に伴うリスクを計算に入れるならば、少なくとも安全とは両立しない。