井上和彦(ジャーナリスト)

 今次、参議院議員選挙で自民党を含む改憲勢力は3分の2を制し、ようやく憲法改正に王手がかかった。

 本命は憲法9条となることは衆目の一致するところであろう。

 だがここまできて、急いては事を仕損じる。ここは安倍総理も慎重に事を進めねばならない。

 今後、安倍政権がなによりも優先して着手すべきは、広報戦略に重点を置き、これまで偏ったマスコミと護憲勢力による極めて悪質なデマと妄想によって洗脳された世論を正常化させる必要があろう。
参院選翌日の7月11日、自民党本部で開かれた安倍首相の記者会見。大勢の報道陣が詰め掛ける中、安倍首相は自民党の憲法草案をベースに改憲論議を進めたい意向を示した
参院選翌日の7月11日、自民党本部で開かれた安倍首相の記者会見。大勢の報道陣が詰め掛ける中、安倍首相は自民党の憲法草案をベースに改憲論議を進めたい意向を示した
 「自衛隊が軍隊になると戦争になる」「憲法9条があるから平和が保たれてきた」など、まったくお門違いのウソを信じ込まされている多くの国民に、しっかりと真実を伝え、洗脳を解き迷信を払拭することに着手してゆく必要があろう。

 国防軍の創設はここから始まる。

(一)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(二)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 日本国憲法第9条である。

 日本は、「陸海空その他の戦力を保持しない」ことになっているが、実際はこれに相当する陸海空自衛隊および海上保安庁なる“戦う力”つまり戦力を保有している。いかなる屁理屈を総動員して自衛隊は“軍隊”ではないと強弁しても、海外の人に理解されるはずはない。そんな“言葉遊び”は日本国内の論争でしかないのだ。

 鉄兜を被って軍服を着用し、小銃を肩に隊列を組んで行進するその姿は、紛れもない“兵隊”であり、そしてその武装組織は“軍隊”以外のなにものでもない。逆に、その姿をみて、「ああ、確かに国会の先生方がおっしゃるとおり、彼らは兵隊ではなく、軍隊でもない。“自衛隊”だ!」などという人がいたとすれば、それはよほどのお調子者でしかない。日本人はいま一度、アンデルセン童話の「裸の王様」を読み直した方がよいだろう。

 そもそも「自衛隊」なら許されるが、「軍隊」なら許されない―こんな屁理屈などバカバカしいにもほどがある。

 こうした「言葉狩り」は他にもある。

 「戦争」は「有事」と言い換え、憲法の条文通り日本社会から言葉の上でも戦争を放棄しているのだから開いた口が塞がらない。

 自衛隊内部でも、「歩兵」は、兵という文字がついているから「普通科隊員」と呼び換え、「砲兵」は「特科」、地雷を仕掛け、橋を架ける「工兵」は「施設課」と呼び換えている。階級もまたしかり。

 「大佐・中佐・少佐」は「1佐・2佐・3佐」などと「大・中・小」を「1等・2等・3等」と置き換えて、軍隊との違いをアピールしているが、それは“無駄な抵抗”でしかない。

 したがって国防軍創設は、こうした自衛隊内部で使われている歪な用語を正常化させることからはじめてはいかがだろうか。