「ポケモンGO」は真夏の夜の夢 スポットから人影が消えていくワケ

『清義明』

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清義明(フリーライター/オン・ザ・コーナー代表取締役)

 「ポケモンGO」が世界中で社会現象といえる規模の爆発的なヒットとなっているようです。

 先行して世界的にヒットしていた位置情報ゲームである「イングレス」のコンセプトとユーザーがつくったゲームデータに、こちらはさらに輪をかけたモンスター級の世界的なヒットキャラクターである任天堂さんの「ポケモン」をキャラクタービジネス的に配したのがポケモンGOと、まずはざっくり最初に定義しておきましょう。

 その組み合わせの妙は、このゲームの生みの親であるNianticのジョン・ハイケが言うように、チョコレートとピーナッツバターのように相性が良かったというところでしょうか。イングレスはサービス開始後数年間で一千万超のダウンロード数でしたが、ポケモンGOはリリース一ヶ月にも満たない現在で、すでに一億ダウンロードを突破しているそうです。そんなわけで、この炎天下の日本でも、スマフォ片手に路上をポケモンGOユーザーが行きかう光景が日々見られているわけです。
「ポケモンGO」の国内配信が始まり、スマホを手に遊ぶ人たち=東京都、7月22日
 これを見て、ビジネスの種を日々捜し求めてやまないマーケッターの皆さんや投資家の方々は、「ポケモンGOは世界を変える驚愕のビジネスプラットフォーム」である、というような進軍ラッパを吹き始めました。昨年までグーグルのお荷物扱いされていた、位置情報ゲームのスピンアウト企画を称揚する高らかなラッパの響きです。しかし、その勇壮な音色に諸行無常の響きを感じ取り、これがひと夏の夜の夢なのではないかという感想を持つのは自分だけでしょうか。

 リリースしてからの、あまりのニュースのなりっぷりに、この業界から足を洗ってから久々にゲームアプリというものをやってみたところの私が、正直なところで思ったのは、このゲームの「驚愕のビジネスプラットフォーム」としての寿命、皆さんがおっしゃるのとは裏腹に、そんなに長くないんじゃないかな、というものでした。

 海外ゲームにありがちな間の抜けたように見えるユーザーインターフェースもアレですし、カメラを使う捕獲シーンもギミックにすぎないし、ボールを投げつけるのにゲーム性があるとは思えない。精度の高い地図を利用しながら街の中を歩いてアイテム(モンスター)を収集するという仕掛けは魅力的ですが、その収集がある程度達成をした後にどうやってゲームを続けさせるのか。それが「ジム」と呼ばれる対戦型のキャラクターバトルなのですが、これは畢竟、強いものだけが楽しめる場所にならざるを得ません。そこはマニアが君臨すれども、ゲーム外にまで波及させるビジネスのフックになりえるかと考えると、じっと手のひらのスマホを見つめて懐疑することになります。

 わたくしがポケモン世代ではないからそういう風に冷めているのかも知れないのですが、しかしよくよく回りを見渡してみれば、本来のポケモン世代は20代のはず。プレイヤーの平均年齢は、どう見てもこれより上ですよね。これはなんなのでしょうか。まあ、これより上の世代も「ドラゴンクエスト」などのロールプレイングゲームなどでならした世代でもありますし、「ビックリマンチョコ」をはじめとする「収集型」のゲーム性に親近感を持っているのではあるのでしょうが。
大ブームは秋口ぐらいに収束する

 さて、ここで結論を言えば、このポケモンGOのウルトラ級の大ブームは、秋口くらいに収束して、たくさんのマニアユーザーを抱える普通のヒットクラスにまで収斂していくのではないかと予想しています。理由は以下のとおりとなります。

 このゲームを構成するのは(1)収集→(2)育成(強化)→(3)対戦 というステージです。現在の爆発的ブームは、この(1)収集のステージでもっぱら成立しています。そもそもは対戦するために収集しているはずなのに、実際は収集がゲームの自己目的となってしまっているのではないかと想像します。では、その次のステージに、どれだれのユーザーが参入していくかというと、これはそこそこにハードルが高い。決まったジムに日夜参集し、そしてせっせとつくったモンスターのデータを持参して戦う。そして、そこには見知らぬユーザーがつくりあげたレベルの高いモンスターが君臨している・・・。

 街中や公園で知らないユーザー同士がいたるところで対戦しているシチュエーションは、非常に未来的な光景といえますが、今のポケモンユーザーに、それがやりたいことなのかとじっくりと聞けば、おのずとこのゲームの先が見えてくるのではないでしょうか。

 そうです。本来はとっかかりに過ぎないところで、社会現象化してしまっているので、ここから先に待ち構えているのは、コア以外のユーザーの大量離脱です。なお、プロトタイプとなったイングレスでもある一定のレベルでユーザーが離脱していくというのはよく見られた光景のようですね。

 マクドナルドさんはじめ、派生ビジネスやら広告うんたらかんたらとか、位置情報ゲームのコンセプトから考えられる、いわばマーケティング的なコバンザメ商法が語られていますが、これらは収集のステージから次の段階に行ったものを想定していません。つまり現在のブームの局面を切り取って、過大評価されているということです。もちろんベンダーさんとアップルと充電池メーカーは儲かりそうですが。では、それ以上のことがあるかというと、ほとんどないだろうという結論に至ります。

 私としては、そんなゲーム本来のビジネスの拡張よりも、ああこれやっていいのね、ということになった他のベンダーさんの動向が気になります。たぶん、位置情報ゲームの進化版がもっと現れてくるのではないでしょうか。つまり、ポケモンGOのヒットの正体である、ユーザーにとって間口の広い「収集」に特化するものです。

 これですぐに思い出すのは、携帯GPSを使った「位置ゲー」の元祖「コロプラ」です。たぶん今頃はコロプラさん地団太踏んでいると思います。きっと仮想現実っぽく見せた対戦型の企画などは、企画会議に出てたでしょうから。このコロプラ、位置ゲーをビジネスに結びつける数々のトライをしていましたが、どうにもブレイクと呼べるところには至りませんでした。

 なので、コロプラさんあたりは後悔と反省まじりで考えているのではないでしょうか。そうか、歩きながらやれるほどの精度の高い地図データ使って、その地図のロイヤリティ払ってもペイできる可能性あるんだ、とか、キャラクターでパッケージングするという手もあるんだね、とか。
盛者必衰の理を表す「ポケモンGO」

 コロプラさんではなくとも、「位置情報×キャラクター」「グーグルマップのデータ×仮想現実」というような企画書はたくさん出ていたでしょう。ちなみに後者のコンセプトに近いものはクオリティが高いとはいえませんがいくつかすでに存在します。そして現在、は企画会議ではなく、会社の経営会議や役員会議のような場所で「今すぐポケモンGOみたいなの作れ」と決定がなされていることでしょう。そしてその決定をもとに、企画会議が開かれ、そういえばあいつがこんな企画出していたよね・・・と数年前のプレゼン資料がひっぱりだされるわけです。まあ、ゲームビジネスの世界なんてこんなもんです。

 さて、ここで後発ゲームの開発上のネックになることもいくつかありそうなので最後に触れておきましょう。ひとつは、イングレスからポケモンGOへとスピンアウトしたときに、その蓄積したデータ・・・主に「ポケストップ」として使われたユーザーの投稿データがマネできないということ。ユーザーによってジェネレートされた莫大な写真と名称データは確かに一朝一夕ではつくりあげることはできません。しかし、ポケストップって、ゲーム内の一要素にすぎず、例えこのような機能をそのまんまパクるとしても、代替方法はあるのではないかと思っていますがいかがでしょうか。
ポケモンGOを楽しむ人たちでにぎわう公園=7月28日、大阪市北区
 もうひとつの問題は、ナイアンティックさんがどこまで特許を押さえているかということでしょうか。しかし、それを潜り抜けて説得力あるゲーム性をつくりこむのがゲーム企画者の腕の見せどころ。そうやってゲームは進化し続けたわけですから。

 以上は、スレたゲーム会社の元マーケティング担当が、ヒット商品はとりあえずクサしてみるという昔のクセを出しつつ、それが流行っているならこんなこともできるよという企画者にありがちな根拠のあまりないポジティブシンキングで予想したものです。当たるも八卦、当たらぬも八卦。しかして、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す。街歩きに涼しくなった秋口の頃に、どれくらいのポケモンGOユーザーがスマホ片手に徘徊しているか。まあ、みなさんとウォッチしてみましょう。

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