「ポケモンGO」は世界を制したクソゲー ハリボテだから飽きられる

『常見陽平』

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常見陽平(千葉商科大学 国際教養学部専任講師)

「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である」(『共産党宣言』マルクス、エンゲルスより)

 高校時代に読んで震えた書き出しだ。2016年、幽霊ではないが、モンスターが出現した。「ポケモンGO」というモンスターである。しかも、ヨーロッパどころか世界に。

 ポケモンGOがグローバルな社会現象と化している件はもはや説明するまでもないだろう。ヴァリューズ社の調査によると、日本国内ではリリース後3日間で1000万人がダウンロードしたという(http://www.valuesccg.com/knowledge/report/marketing/022/)。ポケモンが出るという評判の場所に多数の人が押し寄せる、関連株が上昇する(一部は乱高下だったが)、一方で歩きスマホや、熱中している人に対する暴行が問題となるなど、いつも関連するニュースが話題となる。
 郷に入らばポケモンGOということで、私達夫婦もインストールしてみた。今年から介護が始まり、妻は隔週で週末に埼玉の実家に帰っているのだが、ポケモンGOをキッカケに出かけようという話になり、要介護状態となった御父様は、家族でポケモンGO探しに出かけた。『アルプスの少女ハイジ』風に言うならば「クララが立った!」状態だ。もっとも、もともと歩行は可能なのだけど。とはいえ、要介護老人が娘と一緒に外に行きたくなるコンテンツというものはスゴイ。

 ポケモンというコンテンツの活用、Googleから独立した米国企業とのコラボ、据え置き型や携帯型ゲーム機ではなくスマホを利用したこと、リアルとバーチャルの融合、外に出て遊ぶスタイル、地域振興への貢献の可能性、誰にでも遊べるゲームシステム、「ガチャ」などに頼らない課金システム、グローバルなコンテンツなど、同作品が評価される点も皆さんご存知のことだろう。
批判や懸念は大衆が熱狂している証

 そして、一部は前述したが、熱中しすぎてマナーが問題となること、犯罪の機会が生まれてしまうこと、「不謹慎」と言われそうな場所でのプレイが問題となることなども、すでに指摘されてきたとおりだ。これまた、「不謹慎」な言い方ではあるが、このような批判や懸念が生まれるのは、同作品がブームになっていること、大衆を熱狂させる商品・サービスであることの証拠だろう。これは今に始まったわけではなく、子供や若者を熱狂させるコンテンツというのは、社会現象になる一方で、社会問題にもなるものだ。

 思えば、『仮面ライダー』やプロ野球のカードがついてくるポテトチップスがブームになった頃は、お菓子を食べずに捨てることが問題となった。「ビックリマンチョコ」だってそうだ。ファミコンが流行した頃は、ゲームに熱中しすぎることが問題となり、「ファミコンは一日、一時間」というマナーを名人が啓蒙活動を行うなどの取り組みも行われた。販売手法でも、人気タイトルとの「抱き合わせ販売」が問題となった。『機動戦士ガンダム』のプラモデルが流行した時には、売り場で将棋倒しが起きた。

 この手の問題というのは、一部、注目が集まるがゆえに必要以上に可視化されることだってある。時にそれはネガティブキャンペーンのようなものになる。「成人式、荒れる若者たち」なんていう絵を撮るために、その手の問題がいつも起こっているエリアでカメラをスタンバイするようなものだ。だいたい、ポケモンGOが助長している側面はあるとはいえ、歩きスマホはもともと問題なのである。ポケモンGOの問題と、切り分けづらいものであることも意識しなくてはならない。

 やっと本題だ。身も蓋もない話だが、ポケモンGOがスゴイのは「世界を制したクソゲー」だということだ。「クソゲー」とは何か? 面白くないもの、ゲームの設定や難易度に無理があるものなどのことを指す。産経新聞のような全国紙が運営するサイトでお下品な言葉を使うことは大変に緊張してしまったが、この現象を説明するためにこれほど最適な言葉はないのでご容赦頂きたい。
『ポケモンGO2』こそ本物である

 率直に、私はあっという間に飽きてしまった。東京の下町に住んでいるが、見渡すかぎり、ポケスポットはあまりなく、ゲームもポケモンと出会ったらボールを投げるだけ。たまに、動作が不安定だったり、現在地がずれたりもする。バッテリーの関係もあるので、スマホを起動させ続けるわけにもいかない。なんせ、『ポケモン』のことを知らない。どれがレア物のポケモンなのかも分からない。我々中年にとっては、ピカチュウよりも生中なのである。

 実際、いくつかの報道ではもう海外でも日本でも飽き始めているユーザーがいることが指摘されている(もっとも、米国でも日本でもTwitter並みのアクティブユーザー数だという報道もあるが)。私もとっくに飽きてしまった。移動中に、「ちょっと起動してみようか」というくらいで、最近ではやっていたことすら忘れてしまった。飽きさせない仕掛け、畳み掛けるようなイベント設定などが弱かったと言えないか。リアルとネットの融合と言われていたが、ハリボテ感にもがっかりしてしまった。ARとVRは違うのだ。
東京都墨田区の公園で「ポケモンGO」に熱中する人々
 あっという間に世界を熱狂させ、株式市場にも期待感が広がったこと、街や電車でもプレイする人をよく見かけることなど、メディアでいつも取り上げられていることなどを見ると、社会現象であることは間違いないのだが。何がスゴイかというと、クソゲーなのに世界を制してしまったことではないか。

 私は「ポケモンGO2」的なものこそ、本命だと見ている。強力なキャラパワーやスマホのテクノロジーを活かし、ネットとリアルを融合させた、グローバルにウケるコンテンツが今後、登場することだろう。

 というわけで、ポケモンGOは世界を制覇したクソゲーとして語り継がれるだろう。そして伝説へ、というわけだ。「バンゲリング・ベイ」も「いっき」も「たけしの挑戦状」もやりようによっては世界を制したのではないかと思えてきた、という四十男にしか分からないネタで本稿を締めくくることにしよう。

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