ARというテクノロジー


 AR(Augmented Reality)、日本語に訳すと拡張現実となる。Wikipediaの定義をそのまま引用すると「人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉」となる。ちょっとわかりにくいので、ポケモンGOに利用されている技術で確認してみよう。ポケモンGOでは戸外でアプリを立ち上げるとGPSと連動したかたちで独自のマップが登場する。そこをアバター(ユーザーの分身)のポケモントレーナーが、ユーザーの動きと連動するかたちで歩き回るのだけれど、あちこち彷徨っているとポケモンが近くにいることが示される。そこでポケモンにタッチすると画面はカメラ画面に変わり、ポケモンだけがアニメのかたちで現れる。つまりリアル画面にポケモンが貼り付けられていて、しかも動いている。そこでユーザーはやはりアニメのかたちで手前に示されているモンスターボールを指ではじきポケモンをゲットする。

 これは典型的なAR技術だ。リアルな画面にヴァーチャルな画面を貼り付けて連動させ、さながら新しい現実、あるいは拡張されたもう一つの現実として認識、あるいはその環境をコントロールする。このリアルとヴァーチャルの連動が、実に新鮮というわけだ。

セカイカメラの失敗、意味不明のグーグルグラス


 ただし、このテクノロジーだけでポケモンGOが成功した言えば簡単に突っ込みが入ってくる。というのもARを利用したもの、しかもスマホを利用したものはすでに存在していたからだ。2010年に(株)頓智ドットがリリースしたセカイカメラがそれで、これはユーザーが街のあちこちにエアタグというヴァーチャルなタグを使って情報を貼り付けるものだった。一旦、タグづけされたものは、他のユーザーが同じ場所でセカイカメラをかざすことで閲覧することができる。

 当初、セカイカメラはその可能性を非常に期待され、そこそこの人気を博した。期待されたポイントは、こうやってあちこちにエアタグが貼り付けられればそれが集合知となり、多くのユーザーがその場にスマホをかざすことで詳細な情報を入手することができる。そして、このような環境が遍在するようになれば「どこでもドア」ならぬ「どこでも情報」と言った環境が構築され、大きなビジネスチャンスを生み出すと考えられたからだ。つまりソーシャルメディアと同様、リアルにヴァーチャルが付随することでリアルワールドをより活性化できる。だがセカイカメラは2014年1月をもってサービスを中止してしまった。
 同じような試みとして世界的規模でARの展開を図ろうと目論んだのがグーグルが開発したグーグルグラスだった。グラスという名のメガネを装着すると、そのメガネガラスに自分の見ているものの情報が出現するというしくみで、やはりこれも「どこでも情報」を志向したものだった。2013年鳴り物入りでリリースされたものの、結局はまともに日の目を見ることはなく、2015年1月には一般向けの販売を中止した。つまりセカイカメラもグーグルグラスもAR技術を利用したもだったのだけれど失敗に終わってしまったのだ。ところが同じAR技術を用いながらポケモンGOだけは社会現象に至るまでの成功を遂げている。