シンプルでお手軽な「ポケモンGO」


 この理由はいくつかの要素が絡んでいるのだけれど、解りやすいように、前述した二つの失敗例との違いから指摘してみよう。

 先ずセカイカメラとどう違うか。セカイカメラを利用していると、だんだんウンザリしてくる事態が発生していた。ユーザー数があまり多くなかったこともあるので、エアタグがないところは全くないという状態だったのだけれど、一方あるところは片っ端からタグづけされていた。秋葉原や渋谷なんてのが典型で、とにかくカオスでしかなかった。ユーザーよってリアルな映像にタグが埋め尽くされたのだ。しかもその情報はユーザーが任意に貼り付けられた管理されていないもの。なので「クソゲー」ならぬ「クソ情報」が多数出現した。有用な情報を確保するためにユーザーは情報を再編集しなければらなかった。そして、それよりもスマホで情報検索した方がはるかに早かったのだ。

 一方、ポケモンGOはカオスではない。集める情報はポケモンだけだ。つまりシンプルイズベスト。そして、これらポケモンの配置についてはある程度、任天堂の方で管理がなされている。つまりカオスにはなっていない(広島平和記念公園に位置しているジムに「ピカドン」と命名されたピカチュウがいて不謹慎だと問題になった程度)。つまり、ものすごくやりやすいというかARの本質的なところ、基本的なところだけを操作すればよい。この「シンプルさの追究」について任天堂は以前から心得ている。1983年、同社がファミリーコンピュータを発売し、これが家庭用テレビゲームの事実上のデファクトスタンダードとなったのは機能を思いっきり削除し、徹底的に操作を単純化してしまったからだ。

 ソフトはカセットロムをスロットに装着するだけ。コントローラーも十字型ボタンと丸ボタン二つ。コントローラーのかたちはペラペラで踏んでも壊れない。しかもコードで繋がっているのでなくすこともない。おまけにコントローラー(二つ)を収納するスロットまでもが本体に用意されていた。一方、他のゲームハードはキーボードを備えていたり、パソコン代わりになったりなど多機能だったが、代えってそれが操作が複雑化し、実態を解りづらくし、ユーザー気を引くことができなかったのだ。ポケモンGOはシンプル+管理、この二つがARという馴染みにくいテクノロジーに人々を引き寄せたのだ。

 次にグーグルグラスとどう違うか。これは言うまでもないだろう。あんなメガネを誰が装着したいと思うだろうか?というより、それだけのためにメガネを装着することの理由が見当たらない。しかもスマホと同価格(というかむしろ高額)。で、なんのために使うのかすらわけらないものに人は食指を伸ばしたりはしない(唯一、わけのわからないもの近年手を伸ばしたガジェットがAppleWatch。これは「Appleだからなんかやってくれるに違いない」というApple信者向けのグッズだったからだろう。ただし、Appleの新開発商品としては売れ行きはすこぶるよろしくない)。

 一方、ポケモンGOは高額でないどころかタダだ(ゲーム内課金あり)。もちろんスマホは必要だけれど、もはやスマホの所有はもはやあたりまえなので、ようするにカネがかからない。で、いつも持っているのでやりたいときにサッと取り出してやることができる。手間いらずなのである。