「親日派GO」誕生!? 世界的なポケモンGO旋風に焦る韓国

『月刊Wedge』 2016年07月27日

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 [WEDGE REPORT]


崔 碩栄 (ジャーナリスト)


 世界中で旋風を巻き起こしている「ポケモンGO」は韓国でも熱視線を浴びている。残念なことに韓国はまだ「サービス予定地域」ですらない。ところが、日本に近い東海岸地域の一部ではプレイが可能だと判明。この噂はあっという間に広まり、ちょうど学校が夏休みに突入した時期であったことも重なり、多くのゲームファン、ポケモンファンが該当地域に殺到した。東海岸地域は突然の「特需」に沸いている。

 ポケモンGOを観光客誘致に利用しようと、市を挙げてSNSを通じた広報活動に乗り出したのは東海岸に位置する束草市である。束草(ソクチョ)市は海水浴場で有名な観光地だが、現地のリゾート地やカフェでは近くでモンスターが出ますと大々的に宣伝し、ポケモンGOユーザーを誘っている。
安全に気を付けることを訴える横断幕。束草警察署が設置したもの


韓国がポケモンGOを産み出せない理由
「コンテンツ不在」


 ポケモンGOが世界的旋風を巻き起こすと、スマートフォンやオンラインゲームの開発において実績を残していると自負する韓国では「なぜ我々はあのようなゲームを作れなかったのか?」、「韓国のゲーム業界は何をしていたのか?」と批判の声が上がった。

 厳密にいえばポケモンGOを開発した会社は、日本ではなくアメリカのナイアンティック(Niantic) 社だ。だが「日本」が関わる競争には、負けることを何よりも悔しがるのが韓国である。日本で誕生したポケットモンスターというコンテンツに世界中が熱狂している、という事実に我慢ならないのは当然だ。

 そしてここで多くの韓国人が示す反応は、いつも通りの、それである。
世界が共感できるコンテンツを作れるか

 つまり「拡張現実(Augmented Reality)を利用したコンテンツ開発は韓国が先に行い、既にいくつもの試みがなされていた」などと負け惜しみと取られてもやむを得ないような開き直りをみせるか、「ゲームに対する政府の行き過ぎた規制(利用可能年齢、時間などに対する規制)が、ゲーム業界の発展を阻害している」などと誰かのせいだと宣伝してみせるのだ。あるいは、韓国生まれの人気のアニメキャラクター「ポロロ」や「タヨ」のようなコンテンツを利用した「韓国版ポケモンGO」を作るべきだと「純韓国産」に固執したオーダーを声高に叫んでみたりする。
 もっとも、今回の一件に関しては冷静に分析する声も少なくない。これらの声に共通して聞かれるのは「コンテンツの不在」という問題だ。ポケットモンスターはここにきて急ごしらえで作られたコンテンツではない。長い時間をかけ、数多くのキャラクターとストーリーが蓄積され、ゲームになるずっと前から全世界の子供たちから愛されていたキャラクターだ。果たして韓国にそのようなコンテンツがあるだろうか、という議論がなされているのである。

 韓国はゲーム産業が活況だ。韓国の代表産業の一つと言っても過言ではなく、優秀な開発者も少なくない。彼らが総力を挙げて取り組めば韓国も短期間のうちにポケモンGOと同じような形式のゲームを作り上げることだってできるかもしれない。だが問題は、韓国には世界に通用するコンテンツがないという点だ。ポケモンGOも、ポケットモンスターという抜群の認知度、人気を持つコンテンツが存在しなかったのならば、ここまでの人気を博すことはできなかったことは間違いない。

世界が共感できるコンテンツを作れるか


 日本にはポケットモンスター以外にも、ドラゴンボール、NARUTO、ワンピースなど、世界的人気を誇るコンテンツは枚挙に暇がないほど存在する。それは日本の漫画、アニメ産業とそのファンたちが数十年間かけて作り上げてきた財産ともいえる。一方、韓国には、残念ながら世界中から愛されていると言えるキャラクターがいない。国内で人気を博し、愛されているキャラクターはいるが、世界の市場にアピールするためにはまだ力不足だというのが実情だ。

 大手芸能事務所が育て上げたアイドルグループや、政府が国を挙げて広報し、世界化に向けて力を注いでいる韓流ドラマの中には、世界の市場にアピールできていると評価できるものもあるかもしれない。だが、ポケットモンスターのようなキラーコンテンツは短期間のうちに作り出せるようなものではない。
「親日派GO」を作る?


「親日派GO」を作る?


 そんな焦りと苛立ちの副作用だろうか? コンテンツ不足の韓国ゲーム業界からびっくりアイディアが飛び出した。拡張現実の世界で「親日派」を捕まえる「親日派GO」を作ろうというアイディアだ。釜山地域の地方紙、国際新聞は以下のように伝えている。

 一部開発者たちは親日派を処断するゲームの「親日派GO」の開発を前向きに検討している。韓国社会の広範囲に散らばっている親日派を処断するというテーマは、ゲームをする動機づけとして確かなものであるのみならず、教育的効果もあるとの判断からだ。親日人名辞典を使えば名誉棄損だと問題になることもないだろう。
(2016年7月21日国際新聞)

 2009年、民間研究機関である民族問題研究所が編纂した「親日人名辞典」を活用し、親日派を捕らえるゲームを作ろうという提案だ。親日人名辞典に登録されている「親日派」は全部で4776名。ポケモンGOに登場するモンスター約150種類であるから、その数は確かに「豊富」ともいえる。

 しかし、親日派を見つけ出して「処断」するなどという怒りと復讐心を煽るようなコンテンツが海外に通用するなどと、彼らは本気で信じているのだろうか? むしろ韓国が憎悪を助長しているとの汚名を着せられるだけではないだろうか?

 もちろん、構想段階の「びっくりアイディア」の中の一つに過ぎないが、このような発想をしている中から、世界中から愛されるコンテンツが産み出せるのか、甚だ疑問である。韓国社会に足りないのはポケットモンスターのような「コンテンツ」ではなく、世界の老若男女が共感することのできる価値観や世界観であり、そしてそれを漫画やゲームの世界で丁寧に再現するために努力する「モノづくりのこころ」ではないだろうか?

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