まだまだ止まらぬポケモンGO人気、米社会への影響は?

『月刊Wedge』 2016年08月03日

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 [WEDGE REPORT]


土方細秩子 (ジャーナリスト)


 日本でもサービスが始まったスマホゲーム、ポケモンGOは、最初に公開されたアメリカでは社会現象ともいえる流行を見せている。
ニューヨークの地下鉄構内でポケモンGOをプレイする人に向け、誤って線路に転落しないよう注意喚起する広告(Getty Images)


 アメリカでのダウンロード開始日は7月6日。スマホアプリの市場リサーチを行うセンサー・タワー社によると、わずか19日でアンドロイドのみのダウンロード数が5000万に到達した。これは史上最速で、2位のカラー・スイッチ(パズルゲーム)は77日、3位のスライサーは81日だ。7月25日現在、アップルのiOSを含めたダウンロード数は7500万に達した。

 しかもこれは世界の32カ所の市場のみでの数字だ。今後日本をはじめ世界中での公開が広がるにつれ、センサー・タワーは「最初の2カ月で1億ダウンロードも視野に入る」と予測する。
ポケモンGOがニュースにならない日はない


ポケモンGOがニュースにならない日はない


 7月の公開日以降、アメリカではポケモンGOがニュースにならない日はない。爆発的な人気と同時に、ポケモンGOプレイヤーの様々なアクシデントも報道される。

 例えば一緒にプレイしていた少年グループが森の中で女性の遺体を発見、というまるで「スタンド・バイ・ミー」のような事件があったかと思えば、ゲームをプレイしながら運転していた、と思われる交通事故が多発。カナダでは「ポケモンを追いかけているうちに誤ってアメリカとの国境を越えてしまった」少年がニュースとなった。カリフォルニア州では2人の少年がモンスターを追いかけて崖から落ちる事件も起こった。

 ニューヨーク州では、性犯罪者に対し執行猶予中あるいは保護観察中にポケモンで遊ぶことを禁じる、という条例までもが出された。性犯罪者にはGPS追跡を行うため、ウロウロされると迷惑ということ、またゲームを通じて未成年者などと知り合う機会を減らすため、などが理由として挙げられている。

 ソーシャルメディアでは「ポケモンGOはすでにピークを過ぎた」という意見も聞かれるが、実際のブームはまだまだ続いている。この人気にあやかろうと、企業スポンサーも次々名乗りを上げている。日本ではマクドナルドが最初の公式スポンサーになった、とのニュースが流れたが、アメリカではファストフードだけではなくテーマパーク、ショッピングモールなど「モンスターハントのために人が集まる場所」のスポンサー、やがて始まるであろうアプリ内広告に備えた小売業など、スポンサー志望の企業には事欠かない。

テーマパークの集客にも影響


 例えば筆者は先日サンディエゴにある海のテーマパーク、「シーワールド」を訪れる機会があったが、入り口に「ポケモンGOのプレイヤーへの注意事項」を伝える看板があった。乗り物へのライド中にアプリを開かない、スマホを見ながら歩くときは周囲に注意を払い人とぶつからないように、などといったものだが、決して否定的ではなく「楽しいモンスターハントを」というニュアンスだ。

 実際多くの子供達(ときには大人も)が園内でゲームをプレイし、多くのモンスターをゲットしていた。シーワールドがスポンサーであり園内に多くのモンスターが出るようセッティングされているためだ。ポケモンGOはこのようにテーマパークの集客力にまで影響を与える存在となっている。
ポケモンGO人気でも任天堂復活ならず……


ポケモンGO人気でも任天堂復活ならず……


 ただし、この現象が任天堂の株価に影響を与えたか、というとそうでもない。アメリカでは7月6日から徐々に株価が上がり、18日には37ドル99セントの高値を記録した。7月5日の終値は17ドル49セントだから、12日間で倍以上になった。ところがその後は連日株価は下落、22日の終値は29ドルである。任天堂株はアメリカでは07年に76ドル80セントの最高値を記録したが、それに届くことはなさそうだ。

 任天堂自身が「ポケモンGOの人気は任天堂本体の収益にそれほど影響をもたらさない」と認めたことなどもあり、市場にはすでに失望感が漂っている。ゲームボーイなどで一世を風靡した任天堂の復活、とはならないようだ。

 今回の、ブームを超えた現象とまで言われるポケモンGO人気はいつまで続くのか。GPSを使った同様のゲームが今後追随すると考えられる中、次の一手をどのように展開するかにかかっている、と言える。

子供が犯罪に巻き込まれるケースが増える?


 一方で、ポケモンGOの脆弱性を指摘する声も増えた。アクシデントの多さだけではなく、「グーグル内の個人情報、位置情報などをあまりにもさらけ出すポケモンGOは、今後ハッカーの標的になるだろう」という見方がある。特に子供のプレイヤーが多い中、犯罪に巻き込まれるケースが増えるのでは、との懸念だ。

 反対に、ポケモンGOは「コミュニティを生み出す」力がある、と称賛する声もある。家にこもってゲームばかりしている、のではなく友達と外に出て一緒にモンスターハントを行う、など「従来のゲームよりは健康的で社交的」であり、一緒に行動することで親子のコミュニケーションが増えた、などの声もある。

 一つのゲームソフトがこれだけ広範囲にわたり話題となり、ニュースとなり、企業の注目を集めたケースはかつてない。ブームがいつまで続くのかは分からないが、久々の大ヒットにゲーム業界全体が刺激を受けたことは確かだ。

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