退位後の称号、処遇、予算、お住まい、スタッフなどの検討はもちろんのこと、ご活動のうち、憲法上、何ができて何ができないのかについて整理する必要がある。退位式はどうするのかの検討も必要だ。とりわけ、今回の陛下のご意向の中でも具体的な言及のあった大喪から即位にいたる一連の儀礼について、これを生前での退位・譲位を前提としたものに組み立てなおさなければならない。現在は一連の儀礼については旧皇室典範に基づく皇室喪儀令などで細かく規定されている。宗教的な色彩を伴うものも多く、専門家による精緻で詳細な検討が必要になる。崩御の際の大喪についても天皇の位を退かれた前天皇の喪儀の在り方や規模についても検討し直さなければならない。元号も変わってくる。

 ③④は退位・譲位を必要としない選択肢であり、大掛かりな制度変更を必要しない。しかし、陛下は今回、摂政を置くことを明確に否定された。国事行為の臨時代行についても否定的だ。しかし、政府としては、これらも①②とともに有力な選択肢としてそのメリット、デメリットを挙げて慎重に検討しなければならない。ことは国家の基軸である皇室の存立基盤に関わる問題であり、陛下のご意向は尊重しつつも、ご生前での退位・譲位ありきでの検討であってならないはずだ。他の解決策も併せて考えるべきだろう。
日本学士院賞の受賞者らとの懇談に臨まれる天皇、皇后両陛下と皇太子さま、秋篠宮ご夫妻=6月27日、皇居・宮殿
日本学士院賞の受賞者らとの懇談に臨まれる天皇、皇后両陛下と皇太子さま、秋篠宮ご夫妻=6月27日、皇居・宮殿
 陛下は全身全霊で「象徴」としての務めは果たすことができなければ、天皇の地位にあるべきではないと考えていらっしゃるようだ。繰り返し言うように、そのご姿勢は陛下のご人格の誠実さを示しており、限りなくありがたい。しかし、敢えて申せば、そのような天皇としての自己規定は次世代を縛りはしないだろうか。天皇にはそのお役割の重要性とともに、その大前提として神話に由来し、初代の神武天皇以来、一貫して男系の血だけで継承されてきたという、他に代わる者がいない存在の尊さがある。退位・譲位の制度化には、その皇室の尊厳や存在基盤を脅かす危険性も伴う。陛下のご意向は尊重しつつ、皇室がその尊厳を汚されることなく、永続するためにはどうすればよいかという視点での慎重な検討が必要なのではないか。