田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 毎回ハードな経済政策について論じているこの連載だが、お盆休み真っ只中で書いている今回は、少し小休止の意味もこめて、「これは傑作だ」と確信した映画について書きたい。もちろん、日本中の映画ファンの話題を一身に集めている『シン・ゴジラ』についてである。『エヴァンゲリオン』などで著名な庵野秀明氏が総監督・脚本を、そして樋口真嗣氏が監督・特技監督を務めた超話題作である。

 筆者は劇場公開初日の初回で見て、短い感想をSNSに書いた。以下はその全文である。

近所のシネコンで早朝の回。普通に傑作。もう一度みたい。 『シン・ゴジラ』は、3.11の国民的な体験を前提にしていることは疑いない。怪獣映画としてのカタルシスはあるが、他方で何人かの評者が指摘してたように政治ドラマ。最後のシーンは新しい「原爆の図」をみるかのようだった。

 『シン・ゴジラ』は完全な情報統制が敷かれていて、事前情報はほとんどなかった。だが公開日になると、多くの映画評や感想がネットに溢れた。そこでは従来のゴジラシリーズとはまったくコンセプトの違う映画、まさに想定外すぎる災害に対する日本の各人・各組織、そして時には米国や諸外国がどう対応するかの「ポリティカル・フィクション」であることが指摘された(「前田有一超映画評」)。宣伝コピーである「虚構対現実」は、この映画のテーマをまさに集約している。
自衛隊が総力を挙げてゴジラに向かう映画「シン・ゴジラ」 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
自衛隊が総力を挙げてゴジラに向かう映画「シン・ゴジラ」 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
 すでに映画が公開されて半月以上が経過しているので、優れた『シン・ゴジラ』論が続々と発表されている。iRONNAでもおなじみの評論家の古谷経衡氏はテレビ番組「モーニング CROSS」やTwitterなどで『シン・ゴジラ』の素晴らしさをまさに言葉を尽くして伝え、また庵野映画の系譜の中で『シン・ゴジラ』の特徴をおさえながら絶賛した。

 『シン・ゴジラ』を傑作とする評論家の宇野常寛氏は、その必読のインタビューの中で、以下のように優れたいくつもの発言を残している(「評論家・宇野常寛氏が語る『シン・ゴジラ』-この映画は99%の絶望と、1%の愛でできている」)。

 そして明らかにこの映画は「3.11の原発事故が東京を直撃していれば、日本はちゃんとスクラップ&ビルドできたのかもしれない」という強烈な風刺が根底にあると思います。そのあり得たかもしれない現実を描くっていうフィクションの力というのを最大限に引き出す存在が今回のゴジラですよね。みんな忘れているけど、怪獣ってもともとはそのために生まれてきたものなんです。