仲野博文(ジャーナリスト)

【リオ五輪短期連載 第3回】

ブラジル代表、真の「10番」はどちらだ


 5日に開会式が行われたリオ五輪も、すでに後半に突入し、アメリカやイギリス、中国といったスポーツ大国は、いつものように多くの競技でメダルを獲得している。今大会では日本人選手の活躍も目立ち、すでにメダルを27個まで増やした。南米では初めてとなるブラジルのリオデジャネイロで開催されている五輪では、ブラジル人アスリートの活躍も注目の的となっているが、ブラジルが獲得したメダルは8月15日(現地時間)の時点で9個のみとなっている。

 ブラジル人選手があまり活躍しないことや、南米特有のファンによる相手チームへの挑発が原因となって、リオ五輪ではブラジル人ファンによる他国の代表選手に対するブーイングの方が目立つ格好となり、リオ発のニュースとして世界中に配信されている。

 アルゼンチンのマクリ大統領は、かつてディエゴ・マラドーナもプレーしたアルゼンチンの強豪ボカ・ジュニオールズの会長をつとめていた事でも知られるが、14日に自身のフェイスブックページに「アルゼンチンとブラジルのファンはフットボールのライバル関係を、リオ五輪に持ち込むべきではないと思う」と投稿。様々な場所でアルゼンチン人選手に対するヤジが酷いとの指摘を受け、大統領自らがフェイスブック上で自制を求める展開へと発展した。アルゼンチンとポルトガルの選手が対戦したテニスの試合では、会場のブラジル人観客からアルゼンチンを罵るチャントを含んだブーイングが繰り返され、興奮しすぎた2人のファンは殴り合いまで始めてしまい、試合会場から追い出されている。
テニス男子シングルス準決勝でスペインのナダルに逆転勝ちし、喜ぶアルゼンチンのデルポトロ。決勝進出を決めた=リオデジャネイロ(ロイター=共同)
テニス男子シングルス準決勝でスペインのナダルに逆転勝ちし、喜ぶアルゼンチンのデルポトロ。決勝進出を決めた=リオデジャネイロ(ロイター=共同)
 他国のチームや選手に対するブーイングを、自国のアスリートがメダルを取れない現実に対するフラストレーションだと指摘する声もあるが、あまり格好のいい話ではない。五輪が終了するまでにこの種のブーイングが鳴りやむ可能性は低く、ブラジル人選手が生まれ変わったように各競技でメダルを次々と奪取する可能性はさらに低い。しかし、全土でブラジル人が金メダルの獲得を期待し、「絶対に取ってもらわなければ困る」と考えるスポーツが1つだけ存在する。ブラジル人が「フチボウ」と呼ぶ競技、つまりサッカーのことだ。