三浦博史(選挙プランナー)

 東京都知事選で小池百合子氏が3000人の大観衆を前に実施した街頭演説や、その模様を撮影した写真や動画の公式サイトへのアップの仕方等について、一部で「カリスマ的」とか「ヒトラー的」などと揶揄する向きもあるようだが、果たして「小池百合子氏はカリスマなのか」について検証してみたい。

 そもそも、『カリスマ』とは、ウィキペディアによると、「超自然的、または常人を超える資質」とされており、キリスト教用語としては、『新約聖書』において、神からの天与の賜物の意味で用いられた言葉とされている。また、ドイツの社会学者であるマックス・ヴェーバーの『カリスマ的支配者』といえば、多少神がかった能力を有する政治家や英雄、独裁者のことを指していると思われる。

 同時に、ヒトラーといえばゲッペルス、ゲッペルスといえば『プロパガンダ』が想起されるように、『カリスマ』と『プロパガンダ』は不可分の関係にある。そもそも『プロパガンダ』とは1629年、ローマ教皇ウルバヌス8世が聖公省内に伝道師養成のためのプロパガンダ大学を設立したのが起源といわれる。

 確かに、今回の都知事選における小池氏は、マスコミ誘導が非常に上手かった。参院選真っ最中の6月29日、小池氏はいち早く、都知事選へ出馬する意向を表明。参院選には大きな話題もなかったことから、即座にマスコミの脚光を浴びることとなった。与党の自民党・公明党は参院選の最中ということもあり、“自民(与党)分裂”のマイナス宣伝を恐れ、身動きがとれないといわれた中、小池氏は自民党東京都連を悪者に仕立て上げ、自らを正義の使者=ジャンヌ・ダルクと称し、「小池劇場」をスタートさせた。それ以降、小池氏の行く先々には多くのマスコミ、テレビカメラが待ち構えることとなった。

 参院選が終わり、増田寬也氏、鳥越俊太郎氏等、候補者が出揃った後も、自公推薦の増田氏や、野党統一候補となった鳥越氏を凌ぐマスコミ人気は変わらず、同行するマスコミやカメラの数は、告示日から増田・鳥越両氏の倍以上といわれていた。

 連日、小池陣営は主にバラエティ番組やスポーツ紙が話題として取り上げやすい素材を提供するなど、派手なパフォーマンス、マスコミ戦術を展開していたのは事実だ。但し、そうした見事な演出ぶりの一方で、聴く人々の心を強烈に揺さぶるような演説だったという声は聞こえない。

 また、マスコミ対策として目立っていたのは、都庁担当記者を含む全国紙より、テレビやスポーツ紙を徹底して取り込む手法だ。これはまさに小泉純一郎元首相や橋下徹元大阪市長が得意とした、仮想敵を作ってケンカを売る“劇場型選挙”の模倣だったといえる。しかし、小池氏が小泉氏や橋下氏以上といわれたのは「アナウンス効果」だ。

 「アナウンス効果」には2つの効果がある。いわゆる“判官びいき”といわれる同情票を集める「アンダードッグ効果(負け犬効果)」と、勝ち馬に乗ろうとする「バンドワゴン効果」だ。小泉氏や橋下氏は、「バンドワゴン効果」は十分取り込んだものの、「アンダードッグ効果(=同情票)」を取り込んだとは思えない。つまり聴衆から大きな共感は得るものの、同情を得るタイプではなかった。