故きを温ねて新しきを知る。内閣改造や新都知事、そして天皇の生前退位といった最新ニュースの深層は、戦後政治史の経験と蓄積がなければ読み解けない。そこで、本誌恒例の老人党座談会を緊急招集した。村上正邦氏(84)、平野貞夫氏(80)、筆坂秀世氏(68)の3氏が存分に語り合った。

村上:安倍総理はいつまで天下を謳歌できるかねぇ。都知事選では小池百合子が勝った。

筆坂:だいたい覚悟が違うよ、小池百合子は。もしあれで負けてごらん。自民党から除名され、年齢的にも政界復帰なんて不可能ですよ。本当に退路を断って都知事選に挑んだわけで。

会談前に握手する、東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗会長(右)と東京都の小池百合子知事=8月9日午後、東京都港区(代表撮影)
会談前に握手する、東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗会長(右)と
東京都の小池百合子知事=8月9日午後、東京都港区(代表撮影)
村上:あの状況で小池が勝つという見通しができないんだから、与党首脳たちの政治センスを疑うよ。世界では今は女の時代だ。アメリカの大統領選でもヒラリーが勝ちますよ。イギリスもドイツも女性首相でしょう。小池はちゃんと流れを見ている。

筆坂:あんな選挙、私は初めて見たよ。最終日の池袋の駅前、5000人を超していたけど、一人も組織票がいないんだよ。そんな選挙なんて、今まで例がないですよ。

平野:これは、既成政党に対するあきらめと、怒りですよ、都民の。

村上:ま、私は大嫌いだけどね、小池百合子(笑い)。

筆坂:へぇ、私は大好きですよ(笑い)。

平野:中国後漢時代の政治家、傅幹の言葉に、「徳に順じる者は盛え、徳に逆らう者は滅ぶ」ってのがあってね……。

──どういう意味ですか?

平野:人徳がない人は……というね。要するに、彼女はみんなを裏切ってきたってこと(笑い)。

村上:小池は本気で都政改革をやるとか、東京都連にメスを入れるとか叫んでるけど、できやしませんよ。

平野:森(喜朗)さんともあっさり仲直りした。

村上:そうそう。結局、自民党の方針に従ってる。もっとも、わが老人党の山口敏夫(元労働相)さんを含め、他の候補者も物足りなかったけどね。新宿まで山口さんの演説を見に行きましたよ。山口さんから電話がかかってきて、「村上さんを選挙責任者にしましたから」って言うから、「そうか、そうか」って(笑い)。

筆坂:私にも「一つ、演説をお願いします」って電話があった。勘弁してよ、なんで私が(笑い)。

村上:私が筆坂先生を応援弁士に推薦したんだけどね。山口さんが「俺の応援でなくてもいいから、好きにしゃべってくれ」って言うんだもん。最後は山口さんも小池の応援してたよ(笑い)。だけど、森をやめさせろという一点突破で、結局、内輪の話なんだよな。

平野:それが都知事選のテーマかどうかという議論はあったけど、アピールの仕方としてはよかったんじゃないですか。

村上:うん。五輪にしても、豆腐じゃないけど、何兆(丁)もかかって、そういう話を持ち出すのはいつも森なんだから。スポーツに政治が絡むと汚くなるから、人を慎重に選ぶべきなのに、もっともふさわしくない人間を組織委員会の会長にしてしまっている。

筆坂:私も山口さんに基本的に賛成だね。なんで、すでに成熟しきった東京で五輪をやる必要があるんだと。五輪って一大利権なんですよね。

村上:全部金なんだよ、五輪にまつわる金。なんで森を辞めさせられないのかというと、安倍政権だからだよ。

筆坂:それはそうだね。安倍政権でなければ、とっくにクビになっているはず。本来なら彼自身が身を引くべきなのに、辞めない。

平野:森政権をつくったところから自民党はおかしくなって、日本の議会制民主主義が揺らぎ始めた。この話をすると、ちょっと耳が痛い人がいるかもわからんけど(と言って村上氏に視線を向ける)。

村上:う~ん(苦笑)。あのときは、キャリアからいって森が一番と、誰しも思ったわけですよ(※注)。私はそれを代弁しただけで。ところが、その後の森の身の処し方が下世話なんだよ。

【※注/2000年に小渕恵三・首相が倒れた際、森喜朗氏、青木幹雄氏、野中広務氏、亀井静香氏、村上氏の「五人組」による密室会談で森氏を後継首相に決めた経緯のこと】

●村上正邦/1932年生まれ。自民党。参議院4期。労働大臣、参議院自民党幹事長、自民党参議院議員会長などを歴任。

●筆坂秀世/1948年生まれ。日本共産党。参議院2期。政策委員長、書記局長代行、中央委員会常任幹部会委員を歴任。

●平野貞夫/1935年生まれ。参議院2期。自民党、新生党、新進党、自由党、民主党などに所属。元自由党副幹事長。

※週刊ポスト2016年9月2日号