田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 二階俊博自民党幹事長が同党総裁任期の延長を検討しているという発言が、内閣改造後いち早くニュースとなった。二階氏は早ければ年内に総裁任期の延長を決着させたいと最近でも発言を繰り返し論説まで公にしている。現在の安倍政権の高い支持率の維持を背景にすれば、この総裁任期延長論は、そのまま安倍政権続行を党内的に支援する結果になるだろう。

 ところで筆者がこの二階発言を聞いてまっさきに思ったのは、いかに「ポスト安倍」を選ぶのが難しいかということであった。現状、野党はもちろんのこと与党、特に自民党の中でさえも容易に「ポスト安倍」は見出しがたい。もちろん政治的な権力のバランスによって、実際の「ポスト安倍」はそのうち選出されていくだろう。ここで筆者が特に考えたいのは、「ポスト安倍」には何が望まれるかだ。そしてこの「ポスト安倍」を考えていくと、(批判勢力には残念なことだが)「ポスト安倍は当分、安倍晋三氏以外にいない」という結果になってしまう。同様のことは二階幹事長の論説でも採用されている結論だ。また政治学者の岩田温氏は政治学的視点から、「政党の論理」で事実上の総理の任期を制約するべきではないとした(「自民党総裁の任期延長は時代に相応しい制度改革だ」)。この考え方には賛成したい。

リオ五輪の閉会式で「スーパーマリオ」に扮して登場した安倍晋三首相
=8月21日、ブラジル・リオデジャネイロ、マラカナン競技場
リオ五輪の閉会式で「スーパーマリオ」に扮して登場した安倍晋三首相 =8月21日、ブラジル・リオデジャネイロ、マラカナン競技場
 だが、これは日本の政治の選択肢がきわめて限られていることの表れでもある。どうして「ポスト安倍は安倍晋三」になってしまうのだろうか?

 安倍政権への期待が高い背景には、もちろんライバルの不在がある。このライバルの潜在的な不在は、主に政策的な理由に依存している。つまり経済政策と安全保障政策において国民の支持をひきつけるだけの対抗勢力がでてこないのだ。経済政策でいえば、アベノミクスであり、安全保障政策は安保法制と積極的な外交戦略だ。ここでは主に前者に話題を絞る。

 アベノミクスは、この連載でも何度も強調したが、日本の経済停滞をデフレの継続に求め、その解消を狙うものだ。そしてデフレ脱却の結果、雇用環境を改善し、経済成長を安定軌道に乗せ、さらに結果的に(副次的に)財政再建やまた防衛費の無理のない増額を通じて安全保障にも貢献しようとしている。

 いわゆる「バブル崩壊」以降、経済停滞が続く中で、アベノミクスのような発想は採用されてこなかった。多くは政府主導の「財政再建路線」と事実上のデフレの放置であった。政治家たちの多くの政策思想の中で、デフレ(あるいは不況)放置と「財政再建路線」は分かちがたく結ばれていた。