猪野亨(弁護士)

 NHKのEテレ「バリバラ」の番組の中で、ジャーナリスト・コメディアンのステラ・ヤング氏が「感動ポルノ」を解説していたことが話題になっています。

 障がい者を使って、無理矢理「感動映像」をとって制作者と視聴者が自己満足を得る、それで視聴率を稼げればすべてOKという商業主義と偽善が織り混ざっています。

 「感動ポルノ」(健常者に勇気や感動を与えるための道具)という言葉を聞いて私は目から鱗が落ちました。

 その番組が報道されているとき、日本テレビが毎年恒例の「24時間テレビ愛は地球を救う」を報道していたことも話題になる一因でした。

 それはともかく、これが話題になったのも、いかに日本テレビの「24時間テレビ愛は地球を救う」が偽善番組として嫌われているかの裏返しでもあります。

 私も若い頃、何度か見たことがありました。この番組では募金集めが主眼のようですが、演出によって作り上げた「感動」によってその気になって募金していくという構図です。

 もっとも、バリバラに出演していたグレース氏はこの「24時間テレビ愛は地球を救う」にお誘いがあれば出演するかという問いには出演するということでした。

 「24時間テレビ愛は地球を救う」でも自分の主張を訴える1つの機会であることに変わりはなく、積極的に乗り込んでいくというのも行動力です。

 しかし、この偽善番組の視聴率は最高値で何と35.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)というから驚きです。司会にアイドルを使ったということもあるでしょうが、それ自体、番組全体を安っぽくしています。

 8月26日~28日に掛けて日本経済新聞社とテレビ東京が行った世論調査では、安倍政権の支持率が62%を記録したというのですから驚くに値しないことなのかもしれません。
マリオに扮し、赤いボールを手に五輪閉会式に登場した安倍首相=8月22日、リオデジャネイロ(ロイター=共同)
マリオに扮し、赤いボールを手に五輪閉会式に登場した安倍首相=8月22日、リオデジャネイロ(ロイター=共同)
 日経新聞の分析では、リオデジャネイロの閉会式に安倍氏が登場したことが追い風になったのではないかとしています。まさにオリンピックの政治利用そのものなのですが、こういった演出に世論が大きく動くというのが現実です。

 「24時間テレビ愛は地球を救う」程度の演出に共感し、あるいはアイドル見たさだけの番組の高視聴率に安倍政権の支持率の高さと同じ臭いを嗅いでしまうわけです。福祉などを考えるきっかけになるような番組ではなく、一時的な快楽の提供であって、偽善の拡大再生産でしかありません。

 このようなことで煽動されてしまうとすれば、小池百合子氏が「グリーンに染めましょう」とやって煽動されていくのと全く一緒です。