藤巻健史(経済アナリスト/参議院議員)

(THE21より2015年10月18日分を転載)
 景気回復は「当たり前」。問題はその後だ。「アベノミクスで、再び景気が上向きつつある」。今年に入り、そんな声が周囲から聞かれるようになった。「異次元」と称された大胆な量的緩和が行なわれ、輸出産業をはじめとした一部の大企業の収益は大幅に回復し、一時は8000円台まで下落した株価は1万9000円を突破した(2015年5月当時)。「この調子でいけば、本当に日本経済は復活するのではないか」という期待を寄せる人も少なくないだろう。

 しかし、その期待をそぐようで申し訳ないが、私は、今の日本経済に対して、いっさい、楽観的な見通しを持つことができない。量的緩和をすれば、一時的に株価が上昇したり、円安で輸出産業の売上げが伸びたりするのは当たり前の話だからだ。政策の良し悪しは短期的には判断できない。出口、つまり量的緩和を終えた時点で、初めてトータルに評価することができる。

 そして、そのような視点から考えたとき、アベノミクスの量的緩和は、後々、間違いだったと断罪される可能性が極めて高い。このままいけば、ハイパーインフレが起きて、円が大暴落する──。私は、いまだかつてないほどの危機感を覚えている。

年収500万円の世帯が年400万円の借金を!?

 なぜ私はそれほどまでに危惧しているのか。順を追って説明していこう。まず、現在の日本経済の状況だが、国の実力ともいうべき名目GDP(国内総生産)は、2014年度は、ピーク時の1997年と比べるとマイナス7%(自国通貨ベース)。それほど落ちていないと思うかもしれないが、その間、多くの国々のGDPは数倍になっている。中国やインド、アメリカはもちろんのこと、イギリスも20年間で2・4倍に伸びている。先進国では、日本だけが世界から取り残されている状況だ。
 安倍首相は、株価が一時の低迷期から50%上がったことを自慢気に話しているが、これは息子の小学校のテストが8点から12点になって「50%も上がった!」と自慢しているようなものだ。平均点が80点の中、12点で喜んでいたら世話がない。GDPの伸び悩みもさることながら、それに輪をかけて危機的状況にあるのが、日本の財政状況だ。2013年度の日本の公的債務残高は、1030兆円。金額で見ても、GDP比で見ても、世界最悪の状態だ。