1年以上に及ぶ長い戦いの幕開けは「敗北」だった。

 2018年、サッカーW杯ロシア大会アジア最終予選の初戦、対UAE。『過去、W杯最終予選の初戦に勝利できなかったチームが本戦の出場権を取った例はない。つまり、初戦に負けた時点で、データ上はロシアW杯への出場が断たれるといってもいい。それほど初戦は重要だ』

サッカーW杯ロシア大会アジア最終予選 日本―UAE後半、日本・FW浅野拓磨(右から2人目)が放ったシュートをかき出す相手GK。ゴールラインの内側だったように見えたが…=9月1日、埼玉スタジアム2002
サッカーW杯ロシア大会アジア最終予選 日本―UAE後半、日本・FW浅野拓磨(右から2人目)が放ったシュートをかき出す相手GK。ゴールラインの内側だったように見えたが…=9月1日、埼玉スタジアム2002
 大会直前、そのようなデータが発信された。記事の意図を、緊張感を持って受け止めたサポーターや一般のサッカー・ファンがどれほどいただろう。相手はUAE。アジアカップで負けている相手だ。しかし、日本は5大会連続でW杯出場を果たしている。もはやW杯の常連だ。

 強い相手には違いないが、いまの日本代表が苦杯を喫する相手ではない―。そんな思いが日本中を包んではいなかっただろうか。データを発信した側も、今ひとつ注目が高まらない最終予選への関心を煽りたい、そんな意図があったようにも感じる。

 日本代表がUAEに負けるかもしれないことを試合前、真剣に案じ、心臓が潰れそうなほど不安にかられたサポーターが何割いただろうか? それが、現在の日本サッカーの実情のように感じる。勝って当たり前。勝つに決まっている。世界のサッカーを眺めれば、そのように安易に考える割合は日本ほど高くないだろう。真剣なサポーターはもちろん緊張感に包まれて試合開始を迎えただろうが、いまの日本はサッカーに限らず、楽観ムードに大勢が占められているのかもしれない。

抗議するハリル監督=9月1日、埼玉スタジアム2002
抗議するハリル監督=9月1日、埼玉スタジアム2002 


 専門家(サッカージャーナリスト)たちは、大いに危惧していた。何しろ、日本が世界に誇る左サイドバックの長友佑都がケガで欠場。毎試合、執拗なボディーブローのように相手の体力、気力を奪い続ける長友の代役はいない。それだけでも、日本代表の危機は明らかだった。が、日本中は漠然と勝利を信じていた。

 試合は楽観ムードを助長する形で始まった。開始11分、清武弘嗣のクロスを本田圭佑が頭で押し込んだ。日本代表が先制。ところが、前半20分、吉田麻也がゴール前でアリマブフートを倒して奪われたフリーキックをアハメドハリルに直接決められ、同点になった。

 さらに後半9分、大島僚太がイスマイル・アルハマディを倒してPKを奪われた。これを再びアハメドハリルに浮き玉で決められ、逆転を許した。

 日本は、逆に明らかにペナルティエリア内で倒されながらPKをもらえなかった。後半32分、本田がヘディングで折り返したボールを途中出場の浅野拓磨が左足でシュート。決まったかに見えたこのシュートをゴールキーパーのエイサが後追いながら懸命にセーブすると、「ゴールラインを割っていない」と判定され、ゴールは幻になった。