加谷珪一(経済評論家)

 公的年金の運用実績が悪化している。株式投資は長期運用が原則なので、短期的な収益に一喜一憂すべきではないとの見方が一般的だが、年金運用という特殊性を考えると必ずしもそうとは言えない部分がある。公的年金は国民にとって最後の砦となる資産であり、その運用手法についてはもっとオープンな議論があってよいはずだ。

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は8月26日、2016年4~6月期の運用実績が5兆2342億円の赤字になったと発表した。この四半期で日経平均株価が約7.0%下落したことに加え、為替市場では10円ほど円高が進んだ。株式中心の運用に切り替えた現在のポートフォリオや基本的な運用方針を考えれば、今回の損失はほぼ想定の範囲内ということになるだろう。

 GPIFは2015年度通期の運用実績についても公表しているが、こちらも5兆3098億円の赤字となった。この四半期と同様、通期の収益についても、日本株と米国株の動きがストレートに反映された結果といってよい。GPIFの高橋則広理事長は、今回の結果を受けて「長期的な観点から運用を行っており、短期的に市場価格が上下しても年金受給に支障を与えることはない」とのコメントを出している。
株価が大幅に下落した米ニューヨーク証券取引所のトレーダー(ゲッティ=共同)
株価が大幅に下落した米ニューヨーク証券取引所のトレーダー(ゲッティ=共同)
 長期的な視点で評価すべきという話は間違いではないが、年金運用という特殊事情を考えた場合、短期で損失が出ても大丈夫とは一概に言い切れない面がある。なぜそうなるのかについては、GPIFが株式中心のリスク運用に転換した理由や、GPIFが運用を行う期間というものを考えれば、よりはっきりしてくるだろう。

 日本の公的年金は赤字が続いており、現役世代から徴収する年金保険料では、受給者に支払う年金の6割しかカバーできていない。残りは税金よる補填やGPIFの運用益で埋め合わせているが、高齢化の進展で年金財政はさらに厳しくなると予想されている。