小笠原誠治(経済コラムニスト)


はじめに

 先日、GPIFの2016年4~6月期の運用成績が発表されたが、結果は5兆2342億円の赤字であった。既に明らかになっていた2015年度の運用成績も5兆3098億円の赤字であったので、安倍政権下でGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内債券の運用比率を減らし株式運用比率を倍増したことが正しかったのかという声が出ている。

 ただ、その一方で、それまでに得た利益の方が大きいとか、損失が発生したからといってすぐに株式運用比率を引き下げるべきだというのはおかしな議論だという指摘もある。

 しかし、そもそも公的年金の運用成績がどうであるかがそれほど大きな問題になり得るのだろうか?

株価下落で公的年金の運用損が発生した
株価下落で公的年金の運用損が発生した
 確かに、高齢者に支給される年金の財源が上手な運用の結果少しでも増えることは一見望ましいようにも見える。

 しかし、忘れてはいけないことは、この公的年金積立金は国から独立して存在している訳ではないということである。つまり、実際に支給される年金の大部分は若者が納める年金保険料から充てられているが、二番目に多いのは国庫負担分、つまり税金であるからだ。積立金の取り崩し分は、年金として支給される財源のごく一部でしかない。従って、ある時期、運用で多額の損失を発生させても、足りない分は税金で補てんされるしかないし、逆にある時期、多額の運用益を計上することができたとしても、その一方で、政府の一般会計には1千兆円を超える借金が積み上がっているのだから喜ぶことはできないのだ。

 要するに、政府にはいろいろな財布があって、それぞれの財布にお金が潤沢にあることが望ましいが、重要なことは全体でどのような収支になっているかなのである。

 多くの国民、そしてマスコミはそのことについて気が付いているのであろうか?

 問題は他にもある。

 そもそも、国が一般の市場参加者とは全く異なる地位と情報を保有した上で、言わば財テクに走ることに問題はないのだろうか? というのも、GPIFの投資対象となる企業は政府の許認可の対象になっているようなものも多く、そうなると癒着やインサイダー取引が起こりやすくなるからだ。それに余りにも巨額な資金を有するGPIFが株式市場に参入することで市場の価格形成機能が阻害されてしまう恐れもある。

 さらには、年金積立金の株式運用で大損を発生させたような場合に、GPIFが世論に押されてやむを得ず株式の売却に動かざるを得なくなることが考えられるが、そうなるとさらなる株価の下落を招くという問題もある。