【日曜講座 少子高齢時代】



河合雅司(産経新聞論説委員)


人口減少を前提とせよ


 東京一極集中が一段と進んでいる。総務省の住民基本台帳に基づく人口動態調査(1月1日現在)によれば、日本人の人口は大阪府を含めた41道府県で減ったが、東京都は断トツの8万6164人増となった。3大都市圏でみても、関西圏と名古屋圏の減少に対し、東京圏は前年比0・31%増であった。

 各自治体とも定住人口減の歯止めに躍起だが、日本全体で人口が減ることに加えて東京一極集中がこのように続いたのでは、その実現は簡単ではないだろう。
 ではどうすればよいのか。発想を思い切って転換し、人口減少を前提として考えることだ。定住人口ではなく、むしろ地域への滞在者である交流人口をターゲットとして力を入れるのである。

 交流人口といっても、一度きりの観光客ではない。その土地に愛着をもって繰り返し足を運ぶような人々である。それには、都会から人々が訪れたくなる縁づくりや動機、受け皿が必要となる。

 そこで提案したいのが、「セカンド市民制度」(仮称)の創設だ。大都会住民が出身地に限らず、お気に入りの旅行先などを「第2の居住地」として選び、「セカンド市民」として“住民登録”するのである。

 セカンド市民は週末や長期休暇のたびに、帰省のごとく「第2の居住地」に通い、地域の人々と交流を深めるイメージである。帰省する地方を持たない都会住民にとっては、まさに第2の故郷といえる場所となるだろう。

「第2の居住地」を選定


 交流人口の拡大策としては「2地域居住」もあるが、地方にセカンドハウスや別荘といった“もう一軒の家”を構えて維持・管理するのは、かなり金銭的に余裕のある人でなければ難しい。

 とはいえ、拠点となる場所がなければ、なかなか同じ土地を繰り返し訪れることもない。そこで、セカンド市民に登録した人たちには「第2の居住地」の行政サービスの一部を受けられるような特典を与えるのである。

 例えば、地元自治体が空き家や古民家を改修したゲストハウスを用意して、滞在中はそこを宿泊施設として安く利用できるよう便宜を図る。宿泊施設とは別に、家具や荷物を置ける部屋を安く貸し出すサービスがあれば、さらに便利だ。

 都会と往復しやすくするため、地元自治体が月に1回程度は直通バスを手配し、セカンド市民が無料で乗れるようにしてもよい。

 一方、交流人口を増やすには、その土地に自分をあてにして待っていてくれる誰かがいて、活躍できる「居場所」と「出番」が用意されていることもポイントとなる。

 地元自治体は便宜を図る代わりに、例えば街おこしのアイデアづくりの協力や地域イベントへの参加を求める。祭りやイベントの裏方業務を依頼したり、ボランティア活動への参加を呼び掛けたりすればさらに交流が深まろう。

 繰り返しイベントに参加すれば、あいさつする知り合いも増える。親しくなった地元住民と親戚(しんせき)付き合いになれば、家に泊めてもらったりするケースに発展もしよう。起業などにつながれば、定住する人が出てくるかもしれない。

居住実態で住民税按分


 「セカンド市民制度」を普及させるために、他の制度面からの支援も求めたい。

 自治体が定住人口にこだわる理由の一つに住民税がある。住民票のある自治体に納付する仕組みのため、定住人口が減ったのでは自治体の税収は増えない。

 これを居住実態に応じて、住民票のある自治体と「第2の居住地」の自治体とで按分(あんぶん)する制度へと改めるのである。

 寄付の性格が強い「ふるさと納税」とは異なり、各自治体はセカンド市民を増やさなければ税収を増やせない。逆に言えば、それぞれの才覚と頑張りに応じて税収を増やせるということでもある。

 とはいえ、いざ按分額を決めるとなれば、セカンド市民がどれぐらいの頻度で「第2の居住地」を訪れているのか実績を証明する必要が出てくるであろう。そのためにはICT(情報通信技術)を活用し、年間何日ぐらい滞在したかを証明する仕組みが必要となる。

 日本中で人口が激減する時代が目前に迫っている。人々が活発に交流することなくして多くの地域は残らないだろう。改革の弊害を案じるよりも先に、まずは何ができるかを考えるときだ。