上野千鶴子(社会学者)/坂爪真吾(一般社団法人ホワイトハンズ代表)


障害のある人たちは、どのように自分や他人の性と向き合っているのでしょうか。それらの喜びや悩みは、障害の無い人たちと同じものか、それとも違うものなのでしょうか。
重度身体障害者の射精介助など障害者の性の支援に長年携わり、去年から今年にかけて『はじめての不倫学』『性風俗のいびつな現場』とベストセラーを連発した坂爪真吾さんの最新刊が、『セックスと障害者』(イースト新書)です。
今回、坂爪さんの東大時代の師匠・上野千鶴子さんをゲストに招き、フェミニズムの立場から見た障害者の<性>と<生>について、また弟子の言論活動についての評価など、縦横無尽に語ってもらいました。
今回の<中編>では、性風俗に福祉をつなげる新たな試み、「風(ふう)テラス」がメインテーマの一つとして論じられています。(2016年6月9日、八重洲ブックセンター本店)

「この本、くだらないね」


上野 坂爪さんと久しぶりに会うと、なんとなく指導教官モードになっちゃって(笑)。彼の卒業後の来し方行く末を見てきたので、「そうか、こうやってこの子は育ってきたんだ」と思うものだから、他の本にも触れたいなと。まず『はじめての不倫学』(光文社新書 2015)。コレ、くだらないね。

坂爪 そんな、いきなり全否定(笑)。

上野 だって、不倫のルールとかいろいろ書いてあるけど、結婚するから不倫が成立するんでしょ。

坂爪 まあ、そうですね、結婚がそもそもの問題というのはたしかに分かりますけど。

上野 じゃ、しなきゃいいじゃん。

坂爪 でも、実際に結婚する人がまだまだ多数派だと思うので。

上野 この本は売れたんですか?

坂爪 今、3万4000部ですね。

上野 誰が読むの? これ読んで、何を学ぶの? 

坂爪 たぶん不倫で困っている方とか悩んでいる方が読んでくれていて。

上野 とっくに不倫をやっている人は、読まないんじゃないの?
坂爪 とっくにやっている人は、自分を肯定したくて読むというのはあると思いますね。

上野 ふーん。なんか七面倒臭いルールが書いてあるよね。

坂爪 ルールというか、不倫の「ワクチン」的なものを。

上野 で、不倫学セミナーとかやるの?

坂爪 それはやっていません。

上野 このあいだ、「人はなぜ不倫するのか」というテーマで、不倫業界のクイーン・亀山早苗さんから取材をお受けした時に、「私にとっては、『人はなぜ不倫しないのか』のほうが謎。なぜしないでいられるのかがよくわからない」というやりとりをしたの。そもそも、不倫する・しない以前に、結婚しなきゃなんの問題もないんだから。坂爪君自身は、結婚しちゃったのよね。満足してる?

坂爪 もちろん満足しております、はい。

上野 よかったね。いつまで持つか、わからないけど(笑)。

坂爪 やめてください、そんな(笑)。

上野 結婚は一生モノの約束だから。「期間限定」の約束をしたらいいのにね、特任教員みたいな時限付きの約束。

坂爪 時限立法的な感じで。

上野 5年経ったら、延長しようか、再契約しようか、とかやればいいのに。まあ、でもご苦労さんです。