屋山太郎(政治評論家)

 「小泉進次郎氏は平成の角栄になれるか」 
 このテーマに、一言で答えれば「優になれる」といっていいだろう。総理になったあと田中角栄氏は超インフレで土木事業をストップされたあと、全く無為の人だった。彼の頭には思想がなかった。自らの国家像を抱いていないことは明らかだった。その無思想がロッキード資金程度で打ちのめされた原因だろう。生き伸びるために「自民党周辺居住者」として140人の派閥を作った。角栄氏が内心、失敗したと思ったら、もっと潔い辞め方ができたに違いない。政治の場をもっと汚さずに旅立ったはずだが、角栄氏は道路や鉄道だけを残した、ただの土建屋として終わった。
 
 私は、角栄氏が幹事長、首相の役にある時、毎日接触し、声をかけて貰ったが、とても偉い人とは思えなかった。

 これに比べて進次郎氏の政治手腕は角栄の上をいくと思う。ただどのような政治思想をもっているかが、まだ不明なので「人間として角栄氏の上」と評価を下すのは尚早だと思う。

水田を視察した小泉進次郎氏=6月29日、福島県天栄村
水田を視察した小泉進次郎氏=6月29日、福島県天栄村
 小泉進次郎氏はまだ当選3回。昨年10月から要職の自民党農林部会長に坐っている。進次郎氏は人気抜群なのに出しゃばらない。こと更、目立つようなことはしないという生き方は立派なものだ。こういう生き方をしているからこそ、発言した時に特に注目を集める。

 私などは紙面やテレビに映る“発言”を拾って判断するのだが、進次郎氏は口を開く時は問題の本質をえぐる発言をする。その的確さと鋭さは問題を知る者にとってはギョッとするほどのものである。「もっといいたいのだろうな」と思うのだが、その部分は腹の中に飲み込んで、相手の立つ瀬を残す。

 進次郎氏がいま取り組んでいる対象は全国農業協同組合連合会(JA全農)で、この上にJA全中という巨大権力をもった組織が、去年までは存在した。その全中はすでに半分解体されて実力を失くした。次にJA全農に手をかけているわけだが、巨大組織を潰す時、「改善」と称して手をかけ、実は相手がいうことをきかなければ潰す――というのが進次郎式といっていいだろう。反発は出るのだが、進次郎氏の戦略の正しさが、いつも勝ちを呼び込む。

 農業は戦後、ずっと農協組織に抱えられ、農協の利益とともに生きてきた。農協も儲かる。農民も儲かる二人三脚でやってきた。

 第1次安倍内閣で安倍首相は「減反廃止」を宣言した。減反というのは生産制限をして食用のコメの価格を高値に据え置く政策である。制限をされた農家はコメを作るより損をする立場におかれる。損をしない作物を選べといわれても、現実には麦を作っても豆を作ってもコメ作りよりは損をする。