武貞秀士(拓殖大学大学院特任教授)

(PHP新書『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか』より)

 国際社会は、北朝鮮の核兵器開発を阻止できるのだろうか。

 北朝鮮の核兵器開発には長い歴史がある。国家目標と軍事戦略の重要な根幹をなしているからだ。そして金正恩第一書記の体制下、核開発はさらに加速している。2014年4月から実施している新しい義務教育制度の教育カリキュラムは、理数系科目を重視する内容に変わった。義務教育の期間を1年延長して12年とし、物理、化学、数学、英語の時間を増やしたのである。日本の高校に当たる教育では、核分裂と核融合の違いを教え、ロケットの仕組みを高校生が説明できるという。2014年10月、羅先特別市の高級中学(日本の高校に当たる)を訪問したとき、高校生たちは目を輝かせて「科学者になりたい」と語っていた。羅先特別市の街には「科学立国」のスローガンが目についた。

 北朝鮮の科学教育の重視は、核兵器開発計画と無関係ではない。北朝鮮に対する制裁を強化することにより、北朝鮮が核兵器開発を断念することはないだろう。
 そして各国の姿勢の変化のなかで目立つのは、2016年1月以降の韓国の姿勢の変化だった。1月6日、北朝鮮が核実験をしたあと、韓国は中国との外相同士の電話会談を実現し、朴槿恵大統領と習近平国家主席とのホットラインでの中韓首脳協議を試みた。しかし、このホットラインでの協議に中国が応じたのは2月5日夜であった。

 そして中国が中韓の首脳による電話会談に応じたとき、朴大統領は北朝鮮に対する強力で実効的な国連安保理決議の採択に向け、中国側の積極的な協力を要請した。国連安保理で中国が制裁問題に慎重姿勢を続けていることを考慮したうえでの要請であった。

 しかし習国家主席は「当事国は朝鮮半島の平和・安定という大局に立ち、冷静に対処しなければならない」と答えた。つまり中国は、北朝鮮への強い制裁は避け、対話で解決しようと答えたのである。

 2月7日に北朝鮮がミサイル発射をしたあと、韓国はアメリカとのあいだでTHAADの協議を再開することを表明した。これに対して中国の張業遂筆頭外務次官が2月16日、韓国を訪問して林聖男外務第一次官と会談を行ない、THAADの韓国配備に反対する立場を表明した。林外務第一次官は「韓国の安保と国益の観点から判断する事案である」という韓国政府の立場を張筆頭外務次官に説明した。それに対して張筆頭外務次官は韓国の立場を配慮し、「中国は安保理で新しく強力な対北朝鮮制裁決議案を通過させることに賛成する」と述べたが、実際には、中国は1月以降、強力な制裁には反対していた。

 つまりは中国のほうにも、これまでに蓄積してきた中韓の戦略的な協力関係をフイにはしたくない、という苦悩がうかがえるのだ。一方で北朝鮮への影響力を維持するため、強い制裁は回避したい。国際社会の期待は、中国が強い制裁に応じてくれることである。