1980年代にアイドル全盛期を迎えたものの、『ザ・ベストテン』(TBS系)や『ザ・トップテン』(日本テレビ系)などの歌謡曲番組が次々に放送終了し、1990年代前半にアイドル冬の時代が到来。昭和から平成に時代が移り変わる中で、スタートを切ったSMAPは逆風にさらされた。

 だからかもしれない。彼らはなんだってやった。1992年4月からは『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)のレギュラーに。『おそ松くん』をパロディーにした番組内コント『音松くん』で人気に火がついた。それまでも『たのきんトリオ』などがコントに挑戦することはあったが、SMAPは私たちにとって新鮮だった。

 著書に『1989年のテレビっ子』があるライターの戸部田誠さんはSMAPとそれ以前のアイドルをこう比較する。

 「アイドルがバラエティー番組に出ることは珍しいことではなかったんです。キャンディーズもピンク・レディーも、ザ・ドリフターズや萩本欽一とコントをして、さらに人気を博しましたよね。でもそれまでのアイドルにとって、バラエティーはあくまでも余技。アイドルが“下りてきて”演じていました。
キャンディーズDVDBOX 8時だョ!全員集合 「内気なあいつ」TBS1975.6.7 (c)TBSテレビ
キャンディーズDVDBOX 8時だョ!全員集合 「内気なあいつ」TBS1975.6.7 (c)TBSテレビ
 しかしSMAPは違った。芸人と同じように下積みや修業を経て、本格的にバラエティー番組や笑いに挑戦し、むしろ、ドリフを目指していたようにも見えるほど。そうしたなかで、アイドルという枠組みを飛び出し、平成を象徴するテレビタレントになりました」

 バブルが崩壊し、虚飾が次々とひっぺ返される時代にあって、それまでの飾り立てられたアイドルもまたウソっぽく見えた。そうした中で、何のてらいもなく、好きなものを好きとはっきり言うSMAPの“等身大”は一気にファンの心をつかんでいった。そしてトップアイドルとなってからも、その“等身大”はブレずに貫いた。

 「王子様的な“虚構”の存在だった男性アイドルにとってタブーともいえるカッコ悪い失敗談や恋愛、下ネタトークなどをして、“現実”を持ちこみました。つまりアイドルを虚構から現実の存在にしたことで、彼らは芸能界に革命を起こした」(戸部田さん)

 SMAPの逆説的なスター性を指摘するのは、『SMAPは終わらない』の著者で批評家の矢野利裕さんだ。

 「歌がうまくないのも、踊りがイマイチなのも、途中からどんどんネタにしていきましたよね。“隠して守る”ではなく〝さらけ出す”。テレビの中で縦横無尽に自由に振る舞うSMAPは、ありそうにないファンタジーを舞台の上で見せつける存在ではなく、テレビを通し身近に感じられる存在。スター性を手放したがゆえに、逆にスター性を獲得し、国民的なスターへとなっていきました」