後藤和也(2級キャリアコンサルティング技能士)
        



 民進党代表選挙が混迷を極めている。最有力候補の蓮舫議員に二重国籍(それに伴う経歴詐称)問題が浮上。説明をめぐる混迷ぶりに、疑問の声があがっている。

発言の経緯とは

 そんな中、蓮舫議員が「男なら泣くな」と、党代表選の他候補者に発言したという。

 民進党代表選の候補者討論会で、旧民主党政権の「失敗」に触れ深々と頭を下げる前原誠司元外相に対し、玉木雄一郎国対副委員長が涙ながらに「謝ってほしくない」と訴える一幕があった。蓮舫代表代行は「男なら泣くな」と注意した。

産経ニュース「蓮舫氏「男なら泣くな」と注意 「謝らないで」と涙の玉木雄一郎氏に」2016/09/07

 発言の真意は定かではないが、この報道を受け、筆者は大変残念な気持ちだ。

今回の発言がセクハラである理由

 性別と本来関連のない事柄について、特定の性別のみに関連があるかのような言動は、セクハラとなり得る。例えば「女のくせに・・・」「・・・なんて、男らしくない」というものだ。今回の蓮舫議員の発言は、まさにこれに該当するものだろう。

民進党の臨時党大会で、支持を訴える玉木雄一郎国対副委員長=9月15日午後、東京都内のホテル
民進党の臨時党大会で、支持を訴える玉木
雄一郎国対副委員長
=9月15日午後、東京都内のホテル
 ちなみに、職場におけるセクハラは、「1.職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント) 2.性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)」と定義される(厚生労働省HP「職場でのセクシュアルハラスメントでお悩みの方へ」2016/09/09確認)。

 「何かにつけ、セクハラ!と言われてはたまらない」という意見もあるだろう。「過剰反応ではないか」という声も、よく聞かれる主張だ。

 しかし、例えば「職場のお茶くみは女の仕事だ」という発言について、どう感じるだろうか。元来、お茶くみという仕事は性別と関係ないはずであり、女性であるという理由のみをもって、女性社員だけが割り当てられるものではないはずだ。

 また、上司に「あなたは女だから、頑張らなくていいよ」と言われたらどうだろうか。もちろん上司との関係性やシチェーションにもよるが、職場で努力する・しないは、性別とは関連のない事項のはずだ。男女を問わず、自分の職務に全力を尽くすのは当然のことだろう。仮に、性別のみを理由に人事労務管理に差異を設けるとすれば、明らかな法令違反となる。

発言が演出とすればあまりに稚拙

 おそらく、上記の2例については、多くの人が「合理的でない」と思われるのではないか。そしてまた、今回の蓮舫氏の発言も、特定の性別に行動を紐づけるという意味において、これに類するものである。

 ただし、我が国では「男性は強く、女性はつつましく」という姿勢が堅持されてきた経緯がある。近年ではそのような意識はだいぶ薄れつつあるが、例えば子供が転んだとすれば、男の子の場合は「男の子は泣くんじゃない!」等と言い、女の子の場合は「痛かったね、かわいそうに・・・。」等と声掛けしたりしがちである。

 そのような背景もあり、「男性へのセクハラ」は女性へのセクハラと比して認知度が低いが、今回の発言は、女性から男性へのセクハラ発言と捉えられても仕方はないだろう。

 勿論、蓮舫議員も上記の知見は当然お持ちかと思われる(さすがに、全くセクハラであるという自覚がなかったら、政治家以前の大問題だ)。従って、今回の発言はある種の「演出」、という可能性もあるだろう。

 あくまでその仮説が正しければの話だが、「後輩男性をも毅然とした姿勢で叱責できる強い女性」という印象を与えたい、というとっさの判断だったのではないか。しかしながら、それはあまりに稚拙な演出と言わざるを得ない。上司が見ている前で、アピールのためにとここぞとばかり後輩を叱責する先輩社員のようなもので、将来首相になりうる立場にはふさわしくない立ち居振る舞いと言わざるを得ないだろう。

 例えば「(常に冷静沈着さが求められる)国会議員なら泣くな」ならば、一定の理解は得られたかもしれない。「男は涙を見せぬもの」というステレオタイプに基づいた見解を示すことは、一部の人にウケたとしても、政治家の資質としては望ましいものとは言えないだろう。発言のセンスの問題でもある。

寄り添う姿勢はリーダーの資質である

 諸々の問題に便乗して一議員を叩くな、というご批判もあるだろう。しかし、国会議員はリーダーであり、我々国民の代表だ。さらに、野党第一党の代表ともなれば、首相の座にも座り得る立場の人間だ。相応の地位がある立場ゆえに、その言動が与える影響を侮ってはならない。

 「国会議員が公の場でいうのだから」と、経営者や子供たちが同じような言動を繰り返す可能性もあるだろう。負の波及効果は侮れないのである。発言の真意はご本人しか知り得ないが、物おじしない発言が売りだっただけに、大変残念な気持ちである。

 民間企業の社長候補者が、公の場でセクハラ発言をしたとすれば、おとがめ無しで社長とするだろうか。それは組織のコンプライアンスの問題であり、正常な組織であれば自浄作用が働くはずだ。仮にも労働者の政党を自称するならば、職場で問題視され続けているセクハラについて決してうやむやにしてほしくないし、軽視すべきではないだろう。

 世の中にはセクハラ被害者は非常に多く、皆心に傷を負っている。そうした方々の心情に思いをはせることができるかも、リーダーの資質の一つと考えるが、いかがだろうか。
(シェアーズカフェ・オンライン 2016年9月13日分を転載)

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