児玉克哉 (社会貢献推進国際機構・理事長)

 わずか数ヶ月前、舛添前都知事は海外出張でのファーストクラス利用、高級ホテル滞在や政治資金の私的流用などで猛烈な批判を浴び、一気に退陣に追い込まれた。あれだけ毎日、舛添問題がメディアを賑わしたのに今ではあっという間に「昔の話」になった。今は蓮舫氏の二重国籍問題がメディアを賑わしている。

 舛添氏と蓮舫氏は何が問題だったのだろうか。どちらのケースも政治家の地位を利用した収賄や利権の問題などとも異なる。舛添氏が海外出張にファーストクラスを使ったからといって、1晩20万円のホテルに泊まったからといって、法律違反をしているわけではない。他にもファーストクラスを利用してきた自治体首長もいる。政治資金の私的流用などもかなり「セコイ」額の話だ。決定的な問題とはいえるようなものではない。このレベルなら国会議員も地方議員も厳しく調べれば相当にでてくるはずだ。

 蓮舫氏の場合も、意図的に二重国籍をしていたわけではないし、二重国籍であったかどうかもまだよくわからない状態だ。仮にそうであったとしても、日本にはたくさんの二重国籍のままの人がいるわけで、罰則はない。つまりここまで大議論になるほどの「不正」があったわけではない。日本国籍がないのであれば大問題だが、それはしっかりしているので、本来なら大騒ぎになるような問題ではなかった。

記者の質問を受ける舛添要一都知事=6月10日、東京都新宿区
記者の質問を受ける舛添要一都知事=6月10日、東京都新宿区
 舛添氏が犯した過ちは、初動対応の悪さだ。海外出張費があまりに高額であることをしてされた時、ファーストクラスを使い、高級ホテルに滞在することは、世界の東京都のトップリーダーとして当然だ、と居直ってしまった。全く問題ありません、と言い切り、それで幕切れにしようとしたことが反発を呼んでしまった。多くの人にとってファーストクラスを使うことはまずない。ビジネスクラスだって高嶺の花という人が圧倒的に多いなかで、自分はトップだから当然だ、と言うものだから、都民の怒りに火がついた。東京都の予算は足らないから様々な事業予算が削減されている中で、これだけ贅沢な海外出張の現実を見せつけられたら都知事としての資格を疑われるようになった。そこで、迅速にこれまでの海外出張のあり方を見直す方針を明確にしていたら、おそらくその後の追求もなかっただろう。政治資金の私的流用についても、美術館訪問は東京オリンピックのためとか、絵画収集は国際交流のためとか理由づけて、「問題なし」としようとしたので問題がさらに拡大していった。知事を退職するような問題ではなかったのが、そういう問題に発展してしまったのだ。

 蓮舫氏の問題も初動対応に問題があった。二重国籍が解消されているかどうかの確認は容易ではない。二重国籍が問題視された時にすぐに、二重国籍の解消の確認とそれが行われていなかったときに備えて解消手続きをしておけばよかっただけだ。産経新聞のインタビューで、二重国籍について聞かれたとき「質問の意味が分からないけど、私は日本人です」と的はずれな答えをしている。「私は生まれた時から日本人です」という発言もこの疑惑の時には逆に問題発言になる。「自分は日本で生まれ、法律が整っていたら生まれた時から日本人のはずだった」という思いが強く、こうした発言になったのだろうが、それはわかったこと。現在、二重国籍かどうかということと、自分のアイデンティティをどのように思っているかを聞きたいのだ。後者は直ぐに問題なるものではないが、首相になろうという人のアイデンティティが日本人ではなく、台湾人です、ということではやはり有権者は問題にするだろう。そうではないと明確に言えばいいだけの話だった。それが弁明めいてくるので、マスコミは「蓮舫氏の発言が二転三転」と変化したことを批判することになった。
 
 民進党代表選では地方票は12日必着の郵送となっているから、ほとんどの人はすでに投票をすませたことになっている。各調査が示しているように蓮舫氏の圧勝であろうが、これがもう1週間ほど時間があったらどうなったかわからない。蓮舫氏の勢い、発信力に民進党の復活をかけたいと思う人は少なくない。しかし二重国籍問題での対応などから不安視する人も出てくるだろう。代表に就任しても自民党は攻勢をかけてくるだろう。初動対応のまずさが民進党再生の勢いも削いでしまうかもしれない。

 舛添氏も蓮舫氏もそれほど大きな問題にならないだろうと想定して、軽い対応をしてしまった。舛添氏も蓮舫氏もテレビにもよく出演してきた政治家だ。それだけに大きくならないはずの問題が初動対応の間違いから深刻な問題に発展してしまったといえる。蓮舫氏にはこういうテーマに世間の関心が向くのではなく、民進党の今後の方向について明確に打ち出し、議論して欲しかった。肝心なこのテーマにはほとんど関心が集まっていない。(Yahoo!個人 2016年9月10日分を転載 )