岩田温(政治学者)

 ほとんどの国民が興味を抱かなかったのではないか、と思わざるを得ないほど盛り上がりに欠けた代表選挙だった。国民の関心は誰が民進党の代表になるのかにはなく、蓮舫氏の二重国籍の説明にあった。コロコロと変わる蓮舫氏の説明を聞きながら、不信感を募らせた国民が多かったのではないだろうか。だが、ここでは敢えて二重国籍の問題を取り上げずに、この盛り上がりに欠けた代表選挙を振り返り、民進党の課題について考えてみたい。

 国民が民進党に期待しない理由は何か。それは民進党が何を目指しているのかが明らかでないからだ。確かに民進党が与党に反対しているのはわかる。だが、反対のための反対に終始しているようにしか見えず、民進党自身が何をしたいのかが分からない。そんな思いを国民は抱いている。

 いま振り返ってみれば、民主党が政権交代を実現したのは、「政権交代」という四文字を掲げた政党に国民が期待を寄せたからに他ならなかった。「政権交代」こそが旧民主党の目標であり、悲願であり、その全てであったといっても過言ではない。政権交代以前の民主党は、「一度は自民党以外の政党に我が国の舵取りを任せてみたい」という漠然とした、そして無責任な国民の思いに応えていた政党であったといってもよい。だが、民主党の目標であり、悲願であり、全てであった「政権交代」は、総選挙で勝利し、政権与党となった途端に、実現されてしまった。この瞬間から民主党は目指すべき目標を喪ってしまったのだ。

民進党代表に選出され「がんばろう三唱」をした蓮舫新代表ら=9月15日、東京都港区芝公園のザ・ブリンスパークタワー(鈴木健児撮影)
民進党代表に選出され「がんばろう三唱」をした蓮舫新代表ら=9月15日、東京都港区芝公園のザ・ブリンスパークタワー(鈴木健児撮影)
 目指すべき目的も理念も、そして現実感覚すらないままに右往左往し、時の経過とともに混乱を極めていったのが民主党政権だった。当初は淡い期待を寄せた国民も、「政権交代」それ自身には、何の意味もなかったという当然の事実に気づき、この「政権交代」だけを目的とした民主党政権に失望していった。

 国民の期待を裏切り、没落した民進党が為すべきなのは、自らの明確な理念、目標を掲げることだ。かつての社会党を髣髴とさせるような態度で安全保障政策を語ることが民進党の役割ではないはずだ。集団的自衛権の行使容認は「立憲主義を破壊する」、「徴兵制が敷かれる」等々の過激な言説は、確かに一部の極端なイデオロギー信奉者を熱狂させたかもしれない。だが、多くの国民は、こうした過激な言説を繰り返す政党、知識人に期待を寄せなかったし、そうした熱狂を冷やかに眺めていた。国民が望んだのは過激で極端なスローガンではなかった。国民の方が成熟していたのだ。

 一体、民進党は何を目標としているのだろうか。今回の代表選に挑んだ代表がそれぞれ「保守」という言葉を口にした事実が興味深い。 

「私はバリバリの保守ですよ。みんな間違っているけど。野田佳彦前首相並みの保守ですよ」(蓮舫氏)

「良識的な保守層を取らなければ政権交代できない」(前原氏)

「リベラルで穏健な保守の理念を、民進党の中心的な価値として掲げ、国民のもう一つの選択肢を作りたい」(玉木氏)

 こうした無責任でデタラメな発言に呆れ返ってしまった人も多いのではないのだろうか。例えば、仮に蓮舫氏が「バリバリの保守」だとしたら、彼女と正反対の政治思想を抱く私は「急進的なリベラル」ということになるのだろうか。馬鹿馬鹿しくて話にならない。