山村明義(作家・ジャーナリスト)


「二重国籍問題」と「国家統治権」


 9月15日に行われた民進党代表選で、自らの「二重国籍問題」でケチが付いたはずの蓮舫氏が、2位の前原誠司氏らの票を2倍以上、3位の玉木雄一郎氏を4倍以上離して勝利した。

 民進党代表選は、1回目の投票で党員、サポーター、地方議員の票が437ポイント、国会議員と公認候補者票の412ポイントを合わせた849ポイントの過半数(425ポイント)を獲得すれば勝利し、達しなければ、1位、2位候補の間で決選投票が行われる仕組みだった。ところが、党員、サポーター、地方議員票で、すでに蓮舫氏が全体の約6割を占める293ポイントを獲得。その時点で、前原氏の102ポイント、玉木氏の42ポイント。当日の国会議員、公認候補者票でも、蓮舫氏が210ポイント、前原氏が128ポイント、玉木氏の74ポイントを圧倒的にリードして、蓮舫氏の勝利が最初から決まっていたかのような「圧勝」であった。

「がんばろう三唱」する民進党の蓮舫新代表=15日午後、東京都港区(福島範和撮影)
「がんばろう三唱」する民進党の蓮舫新代表=9月15日、東京都港区(福島範和撮影)
 それにしても、蓮舫氏が自ら日本と台湾の「二重国籍」を事実として認めたのは、党員、サポーター、地方議員票の締め切り日である13日だった。このとき有権者の多くは彼女の二重国籍問題が事実であることを知らないまま投票をしていたことになる。つまり、民進党代表選に関しては、蓮舫氏の二重国籍問題がほとんど焦点にならないまま新代表が決まってしまったのである。

 蓮舫氏の二重国籍問題については、周知のように彼女の発言が二転三転し、物議を醸した。改めて振り返ってみる。
 「父は台湾で、私は、二重国籍なんです」(『週刊現代』1993年2月6日号)、「在日の中国国籍の者としてアジアからの視点にこだわりたい」(『朝日新聞』夕刊93年3月16日号)、「だから自分の国籍は台湾なんです」(『CREA』97年2月号)などと、マスメディアでは自分の国籍は少なくとも「重国籍」となっていたことを認めていたわけだが、今回の代表選では、「私は日本人です」と言い切りながら、日本国籍を取得した当時の年齢についても「17歳」、「18歳」などとコロコロと変わって発言。最後の演説では、「私は17歳から日本人です」と述べていた。

 この蓮舫氏の代表就任は「二重国籍問題」の事実関係に関してもそうだが、今後多くの重大な問題をはらんでいることは間違いない。

 例えば、野党第一党の党首・代表は、仮に政権交代が行われた場合、総理大臣になる可能性が極めて高く、その総理大臣は自衛隊の最終的な指揮権を持つ。二重国籍を持っていた総理大臣が就任すれば、その国家同士、あるいは日本と周辺諸国が戦争状態になった際には、日本の総理大臣が自衛隊の指揮権をどの国家のためにどのように使うか、という点で日本の「国家統治」と「国益」の双方にとって重大な疑念が残るのである。

 今回の「二重国籍問題」は、民進党という公の野党第一党の代表選で浮かんだ問題である以上、この「国家統治権」の問題が問われなければならず、「民族差別」とか「多文化共生」などという文化面の問題とは基本的には関係がない。「日本と台湾の間で育った蓮舫さんがかわいそうだ」などというようなセンチメントな思想が、もし民進党の国会議員の脳裏にあったとすれば、逆に今後の政治判断の大きな過ちにつながる可能性が高い。