上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)

 大橋巨泉さんの最期が話題だ。

 週刊現代8月6日号には「独占!巨泉さん家族の怒り「あの医者、あの薬に殺された」~無念の死。最後は寝たきりに」という記事が掲載されている。

 この記事によれば、巨泉さんは、国立がん研究センターを退院し、在宅医療を受けるつもりだったが、がんの終末期医療と勘違いした在宅医が、過剰にモルヒネ製剤を処方し、亡くなってしまったらしい。

故大橋巨泉氏の遺影と祭壇 =9月5日、東京都港区
故大橋巨泉氏の遺影と祭壇 =9月5日、東京都港区


 この話を聞くと、ほとんどの読者は「在宅医療担当医はとんでもない男だ」と思われるだろう。巨泉さんは有名人だから、この医師も慎重な対応をしたはずだ。それなのに、患者・家族に、ここまで不評を買っているのだから、この医師に、何らかの落ち度があった可能性は高い。

 ただ、今回のケースを、この医師個人の資質の問題で片付かせてしまっていいのだろうか。週刊現代の記事によると、巨泉さんはモルヒネ系の薬を飲み始めて2日目には、「フラフラして一人で歩けなくなり」、3日目になると「二人がかりじゃないと支えられないほど」になっている。そして、5日目には在宅医から「今日がヤマです」と告げられている。その後、集中治療室に担ぎ込まれて、亡くなった。

 週刊現代によれば、巨泉さんが使用した麻薬はMSコンチンやオプソだったらしい。

 MSコンチンとは、モルヒネの徐放剤だ。10~20mgの12時間毎の投与から始め、痛みがコントロールされるまで、一日量を40mg、60mg、80mgという風に増量していく。オプソは、急に痛みが強くなったときに、一日に必要なモルヒネの量の6分の1程度を補充する速放モルヒネ製剤だ。

 このように少量から開始して、増量していくのは、研修医でも知っている常識だ。在宅医が、このルールを破っていたなら問題だが、おそらくそうではないだろう。

 巨泉さんの場合、モルヒネ投与2日目から、体調の異常が出現した。週刊現代では、このことを問題視している。ただ、モルヒネは投与開始時に悪心、嘔吐、傾眠傾向、便秘などの副作用が生じることが多い。多くの場合、モルヒネを続けるうちに、体は慣れてくる。便秘以外の副作用は、やがて改善する。