猪野亨(弁護士)

 北海道神宮でも参拝客に対して、日本会議が主催する憲法「改正」に向けた署名活動に協力していたということがありました。しかし、このような神社による改憲策動は全国展開されているようです。

 業界紙(この業界唯一だそうです。)である神社新報が全国の神社に向けて憲法「改悪」に向けた大号令を発していました。11月17日付で「憲法改正に向け活動 各地で組織づくり始まる」です。

 もともとこの神社新報は、神社本庁の機関紙として出発しています。「神社新報社は昭和21年2月、それまでは国の管理の下におかれてゐた全国の神社が、神社本庁のもとにまとまって民間の信仰団体としての歩みを始めるにあたって、その機関紙として発刊されました」(同社ホームページより)。

 全国の神社の多くが神社本庁のもとに結集していますが、この神社本庁の方向性は靖国神社とほとんど変わりません。昨年11月に掲載されたイベントでは何と「終戦70年講演会「戦後70年 英霊のメッセージ」参加者募集」でした。講師は産経新聞編集委員宮本雅史氏です。
 戦死した人たちを「英霊」扱いするのは極右勢力であることがほとんどであり、先の大戦の無反省の裏返しでもあります。このような神社であればこそ、日本会議との交流も深く、発想は同じということになります。目指すべきは、天皇を中心とした統治体制への「王政復古」であり、戦争ができる国へと変えていくことにほかなりません。

 第六十二回式年遷宮の昂揚のなかでさへ続いた神宮大麻頒布数の減体、斯界の悲願たる自主憲法の制定、来春には五年を迎へることとなる東日本大震災の被災地復興、少子高齢化と過疎化など神社を巡る環境の変化等々、山積する課題を前にして、七十年の歴史を重ねてきた神社本庁の存在意義が問はれてゐるともいへる。まづは、神道指令の発令など占領政策の影響のもとで本庁設立を余儀なくされたといふ事実について、当時の先人たちの思ひを振り返りつつ、その歩みを真摯に見つめ直すやうな地道な取組みもまた必要だらう。

 旧仮名遣いという時代錯誤も甚だしさもさることながら、「自主憲法の制定」の文字が光ります。

 それにしても神社がここまで極右だったとは驚きです。靖国神社が単なる戦争遂行のための精神的支柱であり、宗教とは名ばかりのどうしようもないエセ宗教だということは誰もが認識しているところですからいいとしても、初詣や七五三など庶民の暮らしの中に直結しているような神社において、かかる極右思想に凝り固まっていただけでなく、それを実現しようと動き出したというのですから、これは大いに広められなければならないことです。
 お賽銭、おみくじに支払ったものがどこに使われていくのかということです。参拝する人たちは、それこそ自分だけの御利益ではなく、平和を祈願したりもするでしょうし、誰もが望んでいることです。

 しかし、実態はそこで回収されたカネは憲法「改正」のための資金源にもなるわけであり、平和を望む庶民を大いに欺す欺瞞的存在といえます。神社が宗教の名において戦争ができる国を渇望する、このようなことがわかっていたら、誰がこのような神社などでお参りなどするものですか。

 それにしても神社の雰囲気は私は好きでした。生まれは鎌倉でしたが、近所には神明神社がありましたが、子どもたちの格好の遊び場でした。コミュニケーションの場でもあり、自然の中に調和する存在でした。

 ここまで露骨な政治的主張を始めてしまい、極めて残念です。