【WEDGE REPORT】



亀井敬史(立命館大学衣笠総合研究機構・研究員)


電気自動車等の材料になるレアアースの副産物として産出されるトリウムが、再び脚光を浴びている。 安全性が高く発電出力を調整できるトリウム原子炉(溶融塩炉)を 実用化することができれば、軽水炉や自然エネルギー発電の補完にもなる。 


 原子力は発電時に二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーだが、放射性廃棄物が発生する。一般に意識されることはほとんどないが、国内の使用済み核燃料(※b)の保管場所は、もうすぐ満杯となる。使用済み核燃料は、まず発電所の冷却プールに置かれるが、その容量は日本全体で約2万トン。現在、日本の使用済み核燃料の量は約1万4000トンだ。今後、毎年約1000トン発生する。抱え切れない分は六ヶ所再処理工場にある冷却プールに保管される。これは容量が3000トン。昨年、東京電力が中心となって青森県むつ市に「中間貯蔵施設」の建設を始めた。これも容量は3000トン。早晩、溢れることは目に見えている。

 安定的に電力を供給し、かつ温暖化対策も実施することを踏まえれば原子力は続けてかまわない。むろん安全を確保した上で、だ。その場合でも、このような使用済み核燃料の問題を考えていなければ、いずれにせよ数年以内に原子力政策は行き詰まる。この使用済み核燃料の問題は、特にそこに含まれるプルトニウム(※a)をどうするかが最重要課題である。周辺国から核兵器への転用を警戒されるからだ。

  本来─今後もそうだが─、プルトニウムは貴重な人工の核分裂性物質であり、エネルギーに転換することが目的だ。自然界に大量に存在するが、そのままでは燃えないウラン238が中性子を吸収してプルトニウムが生まれ、エネルギー資源を増大させることができる。これが50年前に見た高速増殖炉(※c)の夢だ。かつての夢はよいとして、われわれが考えなければならないのは、今、そしてこれからのことだ。

 プルトニウムを利用するには高速増殖炉が性能面でもっとも優れるとして開発を進めてきたが、40年以上の歳月と1兆円以上の資金を投じてきたにもかかわらず、事実上、進んでいない。この7月15日に高木義明文科相が「もんじゅ、開発中止も含めて検討」と発言したという。もんじゅについてはそれでよいかもしれないが、そこで使うために蓄積されてきたプルトニウムが消えてくれるわけではない。原子炉級とはいえ、プルトニウムである。わが国が保有する約200トンは、国際原子力機関の定める有意量の2万5000倍だ。日本が核武装を行いうるとは思わないが、諸外国が好意的に見てくれるわけではない。もんじゅの開発中止─すなわちプルトニウム消費先の喪失─は、直ちに周辺諸国の警戒感を引き起こすことにもなる。プルトニウムを化学反応で消すことはできない。それができるのは核反応だけだ。