石川和男(社会保障経済研究所代表)

 今年9月中旬以降、「政府は高速増殖炉『もんじゅ』を廃炉する方向で最終調整に入った」といった趣旨の報道が急にマスコミを賑わせた。私の記憶が正しければ、一番初めは9月13日付けの多くの地方紙朝刊。記事を見ると「政府関係者が明らかにした」とある。いったい誰がリークしたのかは不明だが、「政府関係者」と書いてあるのだから、もんじゅの主管官庁である文部科学省系の官僚か、エネルギー政策全体を所掌する経済産業省系の官僚であろう。閣僚や与党幹部とは思えない。
福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」
福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」
 もんじゅは、日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖炉で出力28万kW。プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを産み出す。1994年に初めて臨界に達したが、1995年にナトリウム漏洩事故を起こした。以来、運転実績は殆どない。2012年に大量の機器点検漏れが発覚し、2013年5月には原子力規制委員会が事実上の運転禁止を命令。原子力規制委は昨年11月から、運営組織をJAEAから変更するよう文部科学省に求めていた。

 私が多くの国会関係者や官庁関係者、マスコミ関係者から聞いたところでは、経産省資源エネルギー庁幹部が「もんじゅ廃炉は決定。フランスが推進する高速炉『アストリッド』計画に乗れば、もんじゅは不要」と各方面で語っているそうだ。こうしたエネ庁幹部の発言が真だとすると、冒頭のような報道が横行するのも仕方ないことかもしれない。ただ、アストリッドには心配な点がある。これは、フランスで2030年以降に開発される予定のタンク型高速炉だが、耐震性に乏しい。地震国の日本で本当に利用できるのかという安全性に係る根拠がしっかりと示される必要がある。そうした技術的裏付けが未だ一切示されていない状況で、十分な検討も準備もなく、資源小国である日本がもんじゅ廃炉などと拙速にエネルギー源の選択肢を自縛して良いものだろうか。

 東京の築地市場を新・豊洲市場に移転させるかどうかという話が今、大揉めに揉めていることは周知のこと。新市場の地下に空洞を作って活用すれば、工期短縮ができるし、安く上がるなどという技術的裏付けもなく、単なる思いつきのような案をわずか数カ月で採用して建物・設備を作ってしまった。その結果、東京都庁の計画からは、土壌の安全性確保の視点が抜け落ちてしまった。「アストリッドを採用するので、もんじゅを廃止しても構わない」という経産省の姿勢に、東京都の新豊洲市場への姿勢に近い響きを感じるのは、私だけだろうか。主管官庁の文科省は確たる見解を早期に示すとともに、経産省とともに改めて熟考していくべきだ。