中岡望(東洋英和女学院大学大学院客員教授)


トランプ氏の支持率上昇


 米大統領選挙の様相が少し変わってきた。ドナルド・トランプ共和党大統領候補は、その暴言と粗暴な行動がひんしゅくを買い、大統領選挙ではヒラリー・クリントン民主党大統領候補に大敗するのではないかというのが一般的な予想であった。だが、ここにきて、トランプ氏の巻き返しが目立ってきた。8月26日から9月16日の期間に行われた10件の世論調査では、7件でクリントン氏支持がトランプ氏を上回ったが、その支持率の平均の差はわずか1.5%にまで縮小している。直近の9月14日のFox Newsの調査ではトランプ氏がクリントン氏を1%リード、9月16日のロサンゼルス・タイムズの調査ではトランプ氏のリードは6%であった。今までトランプ氏のさまざまな発言は半分“冗談”と受け流されてきたが、改めてトランプ氏の考え方を検討してみる必要がある。

米共和党全国大会が開かれたクリーブランドで支持者に囲まれる同党大統領候補の不動産王、ドナルド・トランプ氏=7月20日、米オハイオ州
米共和党全国大会が開かれたクリーブランドで支持者に囲まれる同党大統領候補の不動産王、ドナルド・トランプ氏=7月20日、米オハイオ州
 トランプ氏は人種差別主義者であり、白人優越主義者であると言われてきた。事実、過去のさまざまな発言や行動を見る限り、そうした指摘を的外れとして退けることはできない。もちろん、トランプ氏はそうした批判を退けてはいるが、同氏の本質は人種差別主義者、白人優越主義者である。と同時に、トランプ氏はこうした主張をすることを通して、保守的な白人アメリカ人の感情に訴え、支持を拡大する戦略を取っているともいえる。

 同氏の人種差別的行動や発言はアメリカのメディアによって明らかにされている。たとえば、父親のフレッド・トランプ氏は連邦司法省から事務所を賃貸する際に黒人を差別していると告訴されている。また父親は極端な人種差別集団であるKKK(白人優越主義秘密結社クー・クラックス・クラン)の集会に参加して逮捕された経歴を持つ。こうした考え方はトランプ氏にも引き継がれ、自らが経営するトランプ・プラザホテルの経理担当者に黒人がいたのを知って、「黒人に俺のお金を触らせるな」と担当者を叱責している。また、殺害された白人の81%は黒人が犯人であると、黒人に対する差別を露骨に表現している。事実は15%である。