猪野亨(弁護士)


 米国では、大統領予備選挙が行われ、共和党では当初の予想に反し、過激な発言を繰り返すトランプ氏が指名獲得を手中にしました。安倍自民党政権がトランプ氏の発言に右往左往しています。

 トランプ氏の注目発言はこれです。日本の駐留米軍の経費を全額、日本に負担してもらう。米国の牛肉に38%の関税をかけるなら、日本車の輸入には38%の関税をかける。

 石破氏が早速、反応しています。
 「石破氏は、日本は納税者の負担で他の多くの同盟国よりも多くの駐留経費を負担している▽日本に米軍基地があることで地域の平和と安定に寄与している▽米国の国益にも寄与している−−と説明。在日米軍は同条約に基づいて『極東における平和と安全』のために駐留しており、『ひたすら日本の防衛のために負担しているのだから、経費は日本が持つべきだというのは、条約の内容から論理必然として出てこない』と反論した」

 これはトランプ氏への反論にもなっていないし、ましてやトランプ氏の支持層にとっては雑音でしかないでしょう。日米安保条約の最初の目的といえば、米国が自国の利益にならないようなことをするはずもなく、米国の利益のために日本を属国にしたというものです。
石破茂前地方創生担当相
石破茂前地方創生担当相
 表現などは異なりますが、確かに石破氏のいう主張は従来の日本政府の見解でもあるのですが、しかし、それは米国が東西冷戦においてライバルのソビエトが崩壊してからは、唯一の超大国として、さらには世界市場を力によって維持するという世界の警察官を自負したしばらくの期間までです。

 時代は既に米国が同盟国に負担を求める構図に変わっています。米国がその軍事力をもってしても世界の警察官としての役割を果たすことが現実に無理ということが米国の中でも認識されてきたということもでもあります。

 今や米国の経済は傾き、財政赤字も極限に達している中で、世界の警察を自認しているような悠長なことは言っていられるような状況ではなくなったということです。オバマ政権のときから、アフガニスタン、イラクからの撤退が大きな課題になっていたのも、これ以上の財政負担ができなくなったし、何よりもそれに見合うような経済効果もなかったからです。
 力の政策を推し進めてきたブッシュ政権が行ってきた政策の破綻がその象徴になりますが、米国ではいよいよ国民(有権者)もその矛盾をはっきりと意識したということでもあります。