渡邉哲也(経済評論家)

 ヒラリー・クリントン氏の健康不安問題により、ドナルド・トランプ氏が米国大統領になる可能性が急激に高まっている。選挙は水物であり、まだ一ヶ月以上を残しているため、どちらが大統領になるのかわからない状態ではあるが、日本のメディアや有識者などではそれを懸念する声も大きい。では、なぜこのような懸念が生まれているのか考えてみたい。

 世界各国、基本的に『リベラルな思想』を持つメディアが多く、これは米国も同様である。また、米国では、日本の放送法における公平性規定がなく、各社支持、政党支持候補を明確にした報道が行われている。
米大統領選候補者討論会の会場外でトランプ氏に抗議する人=9月26日、ヘンプステッド(ロイター)
米大統領選候補者討論会の会場でトランプ氏に抗議する人=9月26日、ヘンプステッド(ロイター)
 衛星放送で手軽に見ることができ日本語同時放送を行っていることもあり日本でよく引用されるCNNなどは左派リベラルメディアの典型であり、放送内容に関して、限りなく歪んでいると言わざる得ない。なぜならば、政治ニュースの殆どがトランプ批判であり、トランプへのネガティブキャンペーンの代表格的なメディアであるからだ。 また、共和党よりとされるFOXなども、トランプ氏は共和党主流派の候補ではなく、主義主張で異なる部分が大きい為、好意的な報道が少ないのである。

 つまり、既存メディアのどれを引用しても孫引きしても、トランプに不利な情報ばかりになってしまうのである。ここに世論とマスメディアの大きな乖離が見られるわけだ。そうでなければ、トランプ氏が国民の大きな支持を受け大統領候補に選ばれることなどなかったわけである。

 また、トランプ氏へのネガティブキャンペーンばかりになる理由は他にもある。それは対立候補であるヒラリー氏が原因であり、出す政策が印象論ばかりで具体策が何も無いからである。ヒラリー氏の演説を一時間聞いたところで『アメリカ初の女性大統領』以外の要素はほとんど出てこない。だから、ネガティブキャンペーンに終止する結果になるわけだ。

 自由の国であったはずのアメリカであるが、ここ数年、ポリティカル・コレクトネス(政治的公平)といわれる『差別やヘイトを理由にした言葉狩り』は日本以上のものがあり、ここに不満を持つ国民も多かった。例えば、議会の議長であるチェアマンはマンが男性形であるため、男女を問わないチェア・パーソン、スチュワーデスが女性形だからという理由でキャビンアテンダントに変更されたのがその典型である。そして、それを聖域にした不可触化(タブー)が行われてきたのである。

 しかし、ここに不満を持つ米国民は多く、あえて不可触に触れ、議論を始めたのがトランプ氏だったわけだ。だからこそ、メディア特にリベラルメディアにとって、彼は絶対に許せない存在であり、そこに不満を持つ多くの米国民の支持を集めることが出来たのである。