中東ジャーナリスト 川上泰徳

 中東、アフリカなどでの紛争や政情不安、経済の破綻などで難民・移民が急増している問題への対応を協議する国連サミットがニューヨークの国連本部であった。難民・移民問題の解決のために、国際社会の責任分担や協力を強調した「ニューヨーク宣言」が採択された。

 世界で6500万人の強制的に住む場所を追われ、国内避難民は4000万人、国外に出た難民は2100万人、外国での難民申請者は300万人――。国連サミットでは、各国合わせて来年までに36万人以上の難民を来年までに受け入れることを確認した。

 第2次世界大戦後最悪の千万人単位の難民危機が進むなか、36万人の難民を受け入れという数字は、国際社会の対応力の限界をさらけ出すものでしかない。それでも問題の深刻さを世界に知らせる意味はあったということだろう。
リビア沖の地中海で、700人以上の難民らで満員の船とイタリア当局者が乗るボート(手前)=8月29日
リビア沖の地中海で、700人以上の難民らで満員の船とイタリア当局者が乗るボート(手前)=8月29日


送還されても戻るところのない難民


 難民のうちの480万人はシリア内戦に伴うシリア難民である。2015年には100万人が地中海を超えて、欧州に渡る人の波が、大きなニュースとなった。中でもトルコからの欧州への流れの8割以上を占めたが、今年3月に欧州連合(EU)とトルコの間で、違法にEUについた難民をトルコに強制送還する合意ができ、4月から実施され、トルコからの密航者は大幅に減少した。

 しかし、それで難民の状況が改善されたわけではない。シリア内戦は依然、収束には程遠い状況である。9月中旬のイスラム教の大祭に合わせて、米国とロシアによる1週間の停戦が実施されたが、25万人以上の市民が7月以降、政権軍の包囲と、空爆にさらされているシリア北部アレッポでは、結局、食料や薬品などの人道物資はアレッポに入らないまま、停戦は崩壊した。

 8月下旬にトルコ軍が越境攻撃で反体制自由シリア軍を支援して、過激派組織「イスラム国」(IS)から奪回したジャラブルスには9月になって難民が戻る動きがあったと報道されている。しかし、町は破壊された上に、トルコ軍、自由シリア軍、クルド人勢力、IS――と複雑な勢力構図の中で、不安定な状況は続いている。

 難民問題の根本的な解決には、紛争、政治や宗教に関わる暴力などの難民を生み出す原因を取り除いて、難民が安心して帰還できることが条件となる。シリアで内戦終結の目途が立たない以上、難民流出は今後も続くと考えるしかない。