安田浩一(ジャーナリスト)

 辺野古の問題をめぐって緊迫する沖縄だが、地元の新聞に対する右派の攻撃も激しさを増している。地元の記者たちはこの現状をどう捉えて報道を行っているのか。

機動隊が住民を暴力的に排除


 6月22日、国はついに高江(沖縄県東村)のヘリパッド建設工事を強行した。 現地で取材していた私が目にしたのは、国家権力による剥(む)き出しの暴力である。怒号と悲鳴が響き渡るなか、反対派住民は全国各地から派遣された機動隊員に、文字通り、蹴散らされた。組み伏せられ、顔を地面に押し付けられた者がいた。顔面を殴られた者もいる。両手両足を持ち上げられ、“ごぼう抜き”された女性は、「なぜ、沖縄ばかりがこんな目にあうの」と泣きながら抗議していた。

 この日、国は辺野古の新基地建設をめぐっても、沖縄県が是正指示に従わないのは違法だとして、翁(お)長(なが)雄志知事を相手に違法確認訴訟を福岡高裁に起こした。 政府はやりたい放題だ。力で押さえつければ、沖縄は何とかなるとでも思っているのであろう。
ヘリパッドの工事現場の出入り口付近で、反対派が設置した車両の上から、機動隊員に排除される男性ら=22日午前、沖縄県東村高江
ヘリパッドの工事現場の出入り口付近で、反対派が設置した車両の上から、機動隊員に排除される男性ら=22日午前、沖縄県東村高江
 沖縄は、いつもそうして組み伏せられてきた。国土の0・6%の面積しか持たない島に、全国の米軍専用施設の74%が置かれているのだ。過重負担もいいところではないか。しかもそれは、沖縄が望んで誘致したものではない。押し付けられたものだ。武力で同化を強いられ、戦争に巻き込まれ、多くの県民の命が奪われ、米軍に統治され、基地負担を背負わされた。琉球処分以来、沖縄の立ち位置は変わっていない。

 この圧倒的に不平等な本土との力関係の中で「弾除(よ)け」の役割を強いられてきた沖縄は、まだ足りないとばかりに、理不尽を押し付けられている。差別と偏見の弾を撃ち込まれている。しかも、そうした状況を肯定する素材としてのデマが次々と生み出されていく。
「沖縄は基地で食っている」「本当は振興資金で潤っている」「沖縄は自分勝手」「ゆすりの名人」──。

 うるま市在住の女性が米軍属に殺害された事件でも、ネット上には被害者を愚弄し、沖縄を嘲笑するかのような書き込みがあふれた。
「事件を基地問題に絡めるな」「人権派が喜んでいる」。ナチスのハーケンクロイツを掲げて「外国人追放」のデモを行うことで知られる極右団体の代表も、この事件では、あたかも女性の側に非があるかのような持論をブログに掲載した。ツイッターで「米軍基地絡みだと大騒ぎになる」「米軍が撤退したら何が起きるか自明だ」などと発信した元国会議員もいる。これら自称「愛国者」たちは、簡単に沖縄を見捨てる。外国の軍隊を守るべきロジックを必死で探す。なんと薄っぺらで底の浅い「愛国」か。

 私が『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)を書いたのも、こうした“沖縄ヘイト”ともいうべき言説を放置できないと考えたからだ。この数年間、ヘイトスピーチの問題を取材してきた以上、避けて通ることのできない問題でもあった。